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魔法使いの誤算
第1章 /1
「お腹空いた。チンジャオロース食べたい」
しんみりした雰囲気を終わりにしたくて、私は笑いながら京平にそう伝えた。
京平は『食べよっか』と柔らかい口調でそう言い、ニコッと笑った。
いつもの京平に戻り安心した私は京平から腕を離し、ベッドから降りた。
すると腰を棒で叩かれた様な痛みが走り、『いっ!』と言う短い悲鳴が口から溢れた。
けどここで痛がったらまた京平が気にして落ち込んでしまうので、『いっっよっしゃああ!!』とハイテンションなフリをして誤魔化した。
あまりの大声に『うるさい何時だと思ってんだ!?』と京平に叱られ、人差し指を口に押し当て静かにしろとジェスチャーされた。
あんたの為に誤魔化したんだぞ!!と言い返したかったが、確かに夜な夜な大声を出した私が非常識だったので言葉を呑み込み『ごめん』と素直に謝った。
「今日のチンジャオロースは今までで一番いい出来な気がする」
「その心は?」
「なんとなく」
そんなくだらない会話をしながら私と京平は寝室を出た。
寝室を出るとすぐにリビングなので、私は痛む腰をソファーに降ろしテレビを点けた。
京平はキッチンへ行き、手際よく晩御飯の準備を始めてくれた。
チンジャオロースを温め直す音を聞きながら私は見たい番組を探した。
何度かチャンネルを回していたら、気になるCMを見つけた。
そのCMにはハリウッド女優が出演していて、妖艶なドレスに身を包み男の人とキスを繰り返していた。
何のCMだろうと思っていたら、MARIAと言う文字が画面いっぱいに広がり香水の瓶を持ったハリウッド女優が怪しく笑いCMが終わった。
このMARIAと言うのは有名ブランドの名前で私が一番好きな香水の種類だった。