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魔法使いの誤算
第1章 /1
「相変わらずいい食べっぷりだね」
嬉しそうに私の食事する姿を眺める京平に頷きながら感想を述べた。
「今日のチンジャオロース前回にも増して最高」
相変わらず美味しい京平の料理に舌鼓を打ち感動していると、『それは良かった』と満足そうに京平が笑った。
「ねぇ、夕日?」
「ん〜?」
名前を呼ばれて返事をしたら、ほっぺにキスをされた。
何事かと思い京平を見るとぶつ切りのたくあんをポリポリと音を立てながら食べていた。
凄く美味しそうな音に釣られ、私もぶつ切りのたくあんを口に運んだ。
「何ですか今のキスは?」
ポリポリと音を立てながらぶつ切りのたくあんを味わい、さっきのキスの意味を聞く。
京平はぶつ切りのたくあんを味噌汁と一緒に流し込み、『したくなったからした』と答え、白米を口に運んだ。
来月のクリスマスイブで私達は付き合って2年目を迎える。
この先もこうやって緩やかな幸せが続き、バカップルみたいなことをし合って、結婚するんだろうな。
喧嘩もなく静かで優しい幸せがずっと続いてーーー。
「うるさい黙れ!!!」
ベッドに押し倒され腕を押さえつけられている私の上に、凄い形相の京平がいる。
今まで一度も怒鳴ったことなどない京平がドスの効いた低い声で私に怒鳴った。
この先も緩やかな幸せが続き、バカップルみたいなことをし合って、結婚するんだ、なんて思っていた。
喧嘩もなく静かで優しい幸せが続いていくなんて、夢を見過ぎていたのかな?
怖い。京平が怖い。
「何で消えないんだよ!?何で俺を見ない!?俺を愛さないんだよ!?」
京平の怒鳴っている意味も、何を言っているのかも理解できない。
ただ怖い。
『 って同級生いたっけ?』
きっかけはその質問だった。
その名前を聞いた瞬間京平の顔色が変わり、人を殺しそうな目つきになった。
そして今に至る。
「何でだよぉ……夕日が愛してんのは俺のはずなのに……」
私の腕を痛いくらいに押さえつけ唇を食いしばる京平に、私は何と声を掛けていいのか分からなかった。
京平が分からなかった。
2年目の記念日を迎えた3ヶ月後、私達の緩やかな幸せが色を変えていくなど想像もしていなかった。