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魔法使いの誤算
第2章 /2
時々、夢の中に女が出てくる。
その女の顔は滲んだ水墨画のようにボヤケていて分からない。
だから何だって話なんだけど、その女は夢の中で必ずミルクティーとクロワッサンを食べている。
俺も一緒にその女と同じものを食べている。
美味しいねなんて話ながら食べている。
『私、ミルクティー飲まず嫌いだった』
『ミルクティーなら渋味が弱まって飲みやすいっしょ?』
『飲みやすい。むしろ美味しい』
『だろ?』
『しかもクロワッサンと合う』
『パンなら大体何でも合うだろ』
『いや、クロワッサンが一番合う!!』
そんな会話をしながら二人並んで食べている。
クロワッサンにミルクティーが一番合うなんて嬉しそうな声で笑っている女。
『てか、何の香水使ってる?』
この質問をされるのは何回目だろう?
『MARIAのSecret Roseってやつ。期間限定なんだよ』
そしてこう答えるのは何回目だろう?
この女が出てくる夢は毎回シュチュエーションも会話も同じで、会話の内容を暗記してしまった。
ただ、この夢はいつも大切な所でブツ切れる。
『 』
俺が女の名前を呼ぼうと口を開いた瞬間にいつも目が覚める。
キレの悪い夢の覚め方にいつもモヤモヤさせられる。
だから今日、俺は目覚めが悪い。
「また名前呼べなかった……」
毎度毎度謎を残す夢に少し苛立ちながら、俺はガシガシと乱暴に髪を掻いた。
気分転換にテレビを点けると、MARIAのCMが流れていた。
しかも2年前に期間限定で発売されていたSecret RoseのCMだった。