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魔法使いの誤算
第2章 /2
「夕日?」
勝手に想像して勝手に機嫌を損ね勝手に早歩きで進んでいく私を京平が小走りで追い掛けて来る。
機嫌を伺う様に後ろから『おーい、夕日ー?』と私を呼ぶ京平の声がするが、無視して私は歩き続けた。
て言うか、キャバクラに行くのは許すよ?本当は嫌だけど上司との付き合いとかもあるから渋々キャバクラは許すよ?
けどさ、アフターに行く必要性ってある?
アフターってもう上司関係無しで自分の意思で行くものだよね?
え?それって駄目だよね?アウトだよね?浮気に入るよね?
バナナはおやつに入りますか?的な感じでグレーゾーンだよね!?
頭の中で自問自答を繰り返していたら余計にムカついてしまい、大好きな百貨店に来ているはずなのに全然楽しいと思えなかった。
ムカつくムカつくムカつく。
本当にムカつく!!!
「夕日!!ちょっとどうしたの!?」
いくら呼び止めても無視をする私に痺れを切らしたのか、京平が私の手首を掴んで歩みを止めた。
私は京平から顔を逸らし、眉間にシワを寄せてあからさまな態度を取った。
そんな私の顔を優しく両手で挟み、向かい合わせる京平。
奥二重の真っ黒な瞳に不貞腐れて不細工になった私の顔が映る。
「なーに怒ってんの?」
幼稚園の先生が幼稚園児に聞くような甘い口調で怒っている理由を尋ねる京平。
その顔は口調と同じく甘ったるい笑顔だった。
「………アフター」
「え?」
「アフター……行ったことある様な言い方だったからさっき……」
怒り不貞腐れている理由をボソボソと小さな声で白状すると、京平は下唇を噛み締め眉をハの字に垂らした。
それはペットショップで子犬や子猫を見た時の顔と同じだった。
「ヤキモチ?ヤキモチ焼いたの?」
嬉しそうに、そして子犬や子猫に話しかける時の口調と同じ口調でそう私に聞いてくる京平は、とんでもなくデレデレしていた。
ホットケーキの上で溶けるバター並にデレデレしていた。