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魔法使いの誤算
第1章 /1
「京平が好き」
2年前のクリスマスイブ、私の口が勝手に告白していた。
ボタンを押すと話し出すお喋り人形の言葉の様に、何の躊躇もなくその言葉は飛び出した。
私自身も驚いた。
京平に告白する気なんて微塵もなかったから。
驚きと恥ずかしさで餌を求める鯉の様に口をパクパクさせている私とは打って変わり、目の前に座る京平は平然としていた。
その反応は何だか傷付くものがあって、胸がチクリと痛んだ。
恋愛対象として見ていない女からの告白を受けた男はみんなきっとこんな涼しい顔をするんだろうな、と勝手に決めつけ凹む私に京平が相槌を打つ感じで応えた。
「俺も」
あまりにも自然な流れでそう応えられ、頭がついていけなかった。
『俺も』と言う同意が何に対しての同意なのか分からなくなった。
自分の意思とは関係なく告白したこの口にも頭がついていかず、京平の『俺も』と言う同意にも頭がついていかず、頭から煙が出そうだった。
パニックを起こしフリーズする私を見て京平はクスっと笑った。
その笑みからは余裕が見えて、少しムカついた。
「そんなに固まるなよ」
「だ、だって……俺もって言うから……何が俺もなのか分からなくなって……」
「普通分かるでしょ?……俺も好きだよって意味」
明確にされた『俺も』と言う同意の意味に熱湯をかけられたように顔が熱くなっていく。
鏡を見なくても今の自分が真っ赤になっている事は分かった。