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魔法使いの誤算
第2章 /2




私は背中を擦っている京平に顔を歪めながら頭の中に流れた映像の話をした。

「この香水の匂いを嗅いだら知らない人が頭に浮かんだの。見たこともない人で。それから色んな映像が早送りみたいに勢いよく流れて、何だか気味が悪い」

私の話しを聞いた京平の顔が少しだけ強張った様に見えた。
けど、口調はいつもの様に優しくて心配そうに私の顔を覗き込みながら尋ねた。

「知らない人?その人の特徴は?」

私は頭を押さえながら答えた。

「ロシアンブルーみたいな瞳をした人だった」

特徴を聞いた京平の、背中を擦る手が止まる。
ピタっと電池が切れた玩具のように動かなくなった京平は、明らかに様子がおかしかった。

そして私の顔を幽霊でも見るような目で見ていた。

さすがに分かった。
京平はロシアンブルーの瞳をした人について何か知っている、と。

「知ってるの?」

瞬きもせず固まる京平に私は尋ねる。
けど京平はぎこちなく首を左右に振り、嘘をつく。

見るからに動揺している。
私が忘れている記憶の断片なのかもしれない。

何を忘れているの?
私に何を隠しているの?

「知ってるんでしょ?何で嘘つくの?」

「知らないよ。そんな男知らない」

京平のその言葉が、証拠だった。

だって私ーーー

「男なんてひとことも言ってないよ……」

私の愛する人は、私に何かを隠している。
そして私は誰かを忘れている。
ロシアンブルーの瞳をした男。

きっとその男は、私か京平にとって都合の悪い人なのかもしれない。
もしかしたら二人にとって危険な人物なのかもしれない。

それでも知りたいと思ってしまう。

好奇心か、本能的にか。
分からかいが強烈に知りたい。

「ねぇ、彼は誰?」
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