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魔法使いの誤算
第2章 /2
引き攣った顔で俺を見ている店員に俺は笑いかけた。
すると店員も引き攣った顔を一生懸命笑顔にしながら、下手くそな笑顔で応じてくれた。
俺は店員に背を向け、隣の化粧品のブースで店員と話している夕日の元へ駆け寄った。
俺に気づいた夕日はいつも見せてくれている無邪気な笑顔を俺に向け、手招きした。
まさか目当ての香水があの香水だとは思わなかった。
臭い癖に50mlで11500円もする嫌な香水。
トイレに行くふりをして夕日が強請ってきたグロスを買っている間に、あの忌まわしい臭いは夕日の頭をぐちゃぐちゃに掻き回し、鍵をかけていた記憶の鍵穴に鍵をさした。
パンドラの匣だ。
開けてしまえばこの夢が終わってしまう。
MARIAのブースに夕日がいる姿を見て、嫌な予感はしていた。
そしてSecret Roseの香りを嗅いでいる夕日を見て恐怖した。
葬ってもしつこく夕日に憑き纏う"あいつ"に心臓が震えて吐きそうになった。
"あいつ"に関しての記憶は思い出さないよう"呪い"をかけたのに、なんの因果か夕日は辿り着いてしまった。
パンドラの匣の中身である一つに。
ゾッとした。
そしてその臭いはパンドラの匣の鍵穴に鍵をさし、回した。
『ロシアンブルーの瞳』
そう夕日に言われ思考が止まり、目の前が歪んだ。
君はその瞳を思い出せないはずなのに。
作り上げた幸せにヒビが入る音が聞こえた。
やっと手に入れた夕日が奪われる未来が見えた。
そんな事、許さない。
だから俺は再び夕日が"あいつ"を忘れる"呪い"をかけた。
そうでもしないと夕日が奪われてしまうから、俺は言葉に力を込め君の耳に流し込み"呪った"。