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魔法使いの誤算
第3章 /3



「それなんですか?」

「っ!!!!???」

音もなく近づいてこられたうえに声をかけられた為、心臓が止まりそうになるほど驚いた俺は思わず床にリップクリームを落としてしまった。

落ちたリップクリームを拾おうと床に手を伸ばした瞬間、真っ白な手が俺よりも先にリップクリームを拾い上げた。

爪は半透明の白色でキラキラしていた。

「新商品ですか?」

拾い上げたリップクリームを俺に渡しながらそう訪ねてきた人物の顔を見ると、パートの泉川さんだった。
泉川さんの綺麗な手からリップクリームを受け取る。

キャップを嵌めながら『新商品ですよ』と答えると、泉川さんは他の種類のリップクリームを手に取りまじまじと見つめた。

「これラスベガスで流行ってるリップじゃない」

さすがは泉川さん。
流行に敏感なだけありすぐにこの新商品がラスベガスで流行ってる物だと気づき興味を示していた。

キャップを外し香りを確認する泉川さんのリアクションを伺う。

泉川さんのリアクションは、ノーリアクションだった。
そっと静かにキャップを嵌め、リップクリームをディスクの上に置く。

そして少し残念そうな口調で感想を述べた。

「なんか、普通ね。なーんでこんな普通なリップがラスベガスで流行ってんのかしら?」

泉川さんの感想に同感だった。

「ラズベリーアイスクリームの香りってどんなもんか気になったけど、甘酸っぱいだけじゃない。まぁラズベリーアイスクリームっていまいちピンとこないから、こんなもんだと思うんだろうね」

「同感です。けどこれは完成度高いですよ」

香りの再現度に不服な泉川さんにバナナクレープの香りを渡しながらそう言ったら、『ほんとかなぁ?』と疑がわれた。
あまり期待していない様な顔でキャップを外した泉川さんだったが、香りを嗅いだ瞬間にその顔が驚きの顔に変わった。

「なにこれ再現率高い!!バナナクレープだけ再現率高い!!」

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