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魔法使いの誤算
第3章 /3
あの人は俺を魔法使いだと言っていたが、そんな素敵なものじゃない。
この力は魔法なんかではない。
だって魔法って言うのはもっと可愛らしくてキラキラしていて、誰かを幸せに出来る事を言うんでしょ?
これは魔法じゃない。
『ママ……ママ!!』
男の子が泣いている。
ゴミで溢れたベランダから見えたのは、車に撥ねられ高く飛んだ母親の姿。
水風船を叩きつける様な破裂音に、何か硬いものが砕ける衝撃音がベランダまで響き渡り鼓膜まで届いた。
『ママのお腹から赤ちゃんは消える』
そう母親のお腹に触れながら唱えた数分後の惨事。
6才の男の子はその時気づいた。
自分は魔法使いなんかじゃないーーー悪魔だ。
これは魔法なんかじゃない。
呪いだ。
愛していた人を呪い殺した6才児は今後この呪いを使わず、誰にも言わないと決めた。
この力は愛する人を簡単に傷つけ殺すから、使わないと決めた。
そのはずだったのに……。
やっぱり悪魔は人間になどなれないのだ。
『俺だけに愛されるんだ。夕日は俺だけに愛され俺の愛を受け入れる。幸せになるんだ。苦しみのない日々を生きよう一緒に』
泣き叫ぶ夕日を無理矢理抱きしめながらあの日君に呪いをかけた。
2年前のクリスマスイブの夜。
『俺は夕日の幼馴染みで、夕日はファミレスで俺に告白をする。夕日は俺を大好きになるんだ。そして俺達は恋人になる。忘れられない日にするよ。12時を過ぎたら雪が降る。その雪を眺めながら夕日は幸せな気持ちに満たされる。嫌な記憶は全部忘れるんだ。夕日は に関しての記憶を全て忘れる。 と の事も丸々全て忘れて君は幸せになる。俺が幸せにする』
ーーー死ぬまでずっと夕日だけを愛するよ。
綺麗な言葉で埋め尽くされた強力な呪い。
夕日は嫌だと泣き叫んでいた。
忘れたくないと、俺の腕の中で暴れていた。
それでも俺は君に呪いをかけた。
そうして手に入れた日々が、これだ。