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魔法使いの誤算
第3章 /3

みじん切りに姿を変えた2玉目の玉ねぎもボウルに入れ、半額の黄色いシールが貼られたパックのサランラップに指で穴を開け破き、挽肉をボウルの中に落とす。
ネチャッと音をたてみじん切りにされた玉ねぎの上に乗りゆっくりと真ん中から割れて崩れていく挽肉。
この日々が壊れる時はくるのだろうか?
こうやって真ん中から割れて崩れていくのだろうか?
もう一パック開けて形の崩れた挽肉の上に挽肉を被せるように落とす。
二パック目の挽肉はパックの形を模った綺麗な四角のままだった。
崩れたなら、また呪えばいい。
真ん中から割れて崩れたならまた呪いに呪いを被せればいい。
そしてぐちゃぐちゃに混ぜてしまえばいい。
何もわからない程ぐちゃぐちゃに混ぜて形を作ればいい。
生卵とパン粉を加え、ボウルの中に手を突っ込み混ぜ合わせる。
ネチャネチャと挽肉と生卵が潰され、パン粉が水分を含んでいく。
玉ねぎも挽肉も生卵もパン粉も混ざり合い、一つの具に変わっていく。
俺は混ざり合い薄ピンク色に色を変えたボウルの中身を掬い、形を作っていく。
面長の丸い形を何個も作り、ラップを敷いたお盆の上に置いた。
今日も美味しいと食べてくれるだろうか。
幸せそうな顔を見せてくれるだろうか。
唯一嘘ではない言葉と表情を、今日も見れるだろうか。
『ひどいよ京平……あんたは悪魔だ……』
俺の腕の中で諦めた夕日が笑いながらそう言った。
そしてゆっくりと夕日は呪われていった。
ゆっくりと滲んでいくシミのように。
2年経った今でも、耳に張り付いて離れない。
夕日の泣き叫んでいた声が。
玄関のドアを開けた瞬間、空腹を刺激する匂いがしてお腹が鳴った。
「ただいまー」
恐らくリビングに居るであろう京平に、パンプスを脱ぎながら帰って来たことを伝える。
すると『おかえりー』と言いながら、菜箸を片手に持った京平がリビングのドアを開けて現れた。

