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魔法使いの誤算
第3章 /3
「お待たせしました」
テーブルの上には大皿に盛られた大量のハンバーグとニラと卵の味噌汁と湯気をたてる白米が並んでいる。
美味しそうな料理にお腹の鳴る音が止まらない。
早く早くと急かすようにお腹が騒ぐ。
待てを食らった犬の様な気持ちで箸を持ち、京平の合図を待つ。
今にも涎を垂らしそうな私をチラ見し、クスっと笑った京平。
そして両手を合わせて合図をした。
「いただきます」
京平に続き私も『いただきます』と言い、箸を素早くハンバーグに伸ばした。
受け皿に大きなハンバーグを乗せ、ひとくちサイズに箸で切り口に運び食べる。
口の中に肉汁と玉ねぎのゴロゴロした食感が広がり、自然と口から出た言葉は、
「美味しい!!」
この言葉だった。
その言葉に京平は満足した笑みを浮かべ、味噌汁を啜った。
「京平の料理、本当に好き!!大好き!!」
「ありがとう」
夢中で晩御飯を頬張る私を見つめ、ニコニコ笑っている京平に私は『そんな見ないで食べづらい』と伝えたが、京平は目を逸らしてはくれなかった。
嬉しそうに、幸せそうにニコニコ笑いながら私を見つめ続けた。
あまりに見つめるから恥ずかしくなり、京平の目を左手で隠した。
目隠しをされた京平は私の手首を優しく掴み、ゆっくりと下に下げた。
左手から現れた京平の目は、寂しそうなものに変わっていた。
「京平?」
「夕日に料理を『美味しい、大好き』って言われるの凄い嬉しいし、本当に幸せな気分になる」
しみじみとそう言い私の頭を撫でた京平は、笑っているのに寂しそうな顔をしている様に見えた。
京平は続ける。
「ずっと見ていたい。この先もずっと」
その言葉の意味を私は理解した。
理解したからこそ誤魔化した。
受け皿に残る半分の大きさになったハンバーグを大口を開けて平らげ、口についた油をティッシュで拭きながら『美味しい』と笑う私に京平は『うん、良かった…』と言葉を返し、私から目を逸らした。