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魔法使いの誤算
第4章 /4
小学校のアルバムにも、中学校のアルバムにも、高校のアルバムにも"夕日"と言う名前の女の子はいなかった。
知り合いに聞いても知らないと言われた。
ならあの百貨店で見た彼女は、誰?
ずっと夢の中で言えなかった名前が彼女の顔を見た瞬間、簡単に口から出てきた。
一体彼女は誰なのだろう?
「ヤリチンあるあるっすよねぇ」
外で立ち煙草を吸いながら後輩の瀧が苦笑いをする。
俺は瀧の首の後ろを力いっぱいチョップをしダメージを与えた。
首の後ろをチョップされた瀧は衝撃で煙草の煙を噎せながら吐き出していた。
まるで機関車の様に瀧の口から小出しで出てくる煙を見つめ、頭を掻いて考える。
間違いなく夢の女のはずだ。
偶然か?こんな気味悪い偶然あるのか?
ヤり捨てした女?ヤり捨てされた女?
そもそもあんな子とヤッた事あったっけ?
考えれば考える程分からなくなり、イライラが募る。
瀧は涙目になりながら短くなった煙草をアスファルトに押し付けて消した。
「その百貨店で見た女は間違いなく夢の女なんすか?」
「間違いねぇな。名前までスルっと出てきたからな」
「夕日ってなかなか珍しい名前っすよね。一度聞いたら忘れなさそう」
寒さに鼻を啜り悴む手をパーカーのポケットに突っ込む瀧。
俺は百貨店で見た彼女の顔を思い出しながら瀧に話した。
「すげぇ可愛い顔してたんだよ。モロタイプの顔。あんな彼女欲しいなってこの俺が思う程可愛い顔してた。だからヤり捨てした女って可能性はゼロに近い」
そう聞いた瀧は『うーん』と考え、そして俺の様子を伺いながら恐る恐る意見した。
「そんな可愛い人……千さんの事相手す……」
「黙れチェリー」
瀧の言葉を首の後ろをチョップして遮り、代わりに『ぐぇ』と言う牛蛙が鳴いたような悲鳴を出させた。
想像以上の気持ち悪い悲鳴に攻撃を仕掛けた俺が引いた。