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魔法使いの誤算
第4章 /4
京平の髪は直毛だ。
真っ直ぐで太くて頑固な毛質だから、パーマは一番強く掛けていると言っていた。
私は癖っ気でくるんと毛先が丸まってしまうから縮毛矯正をしていると言うのに。
ないものねだりとはまさに私達の事を言うのだろう。
「いつまで俺の毛で遊ぶ気?」
くるんと丸まる京平の髪を指で絡めながら遊んでいると、スマホゲームをしながらクスリと京平が笑ってそう尋ねてきた。
私はトイプードルみたいな京平の髪を指で巻いたり解いたりしながら『気が済むまで』と答えた。
私にそう言われた京平は『はいはい』と仕方なさそうに返事をし、されるがままの状態でゲームを続けていた。
何度めかのプロポーズを受けた夜から今日で12日が経った。
翌朝京平はいつもと変わりなく朝ごはんと私のお弁当を作り、『おはよ』と笑いかけてくれた。
ただ、ほんの少しだけ目が腫れていた。
奥二重の幅が少しだけ広くなっていて、眠そうな顔になっていた。
きっと私が寝たあとに泣いたのだろうと予想できて胸がチクチクした。
「どうしてはぐらかすの?」
プロポーズを受けた翌日、職場の先輩の宮里さんと玲香に京平の事について相談をしたら、理解出来ないと言う顔でそう聞かれた。
私はネイルチップに薄緑色のジェルを乗せながら答えた。
「年齢的にまだ若過ぎるかなって思って。仕事もまだ続けたいし」
薄緑色に塗ったネイルチップをライトに入れながら在り来りな答えを言うと、宮里さんは呆れたような溜息をした。
宮里さんの真似をして玲香も溜息をしていた。
二人の重く長い溜息にやっぱり愛しているのに断る私がおかしいのだと実感させられる。
「ゆくゆくは結婚する気なんでしょ?」
「もちろんです」
「なら今したって同じじゃないのよ。結婚したって今の御時世仕事なんかいくらでも出来るっつーの!!」
何やら凄くムキになり口調が強い宮里さんに私は苦笑いを返す事しか出来なかった。