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魔法使いの誤算
第4章 /4




「宮さんの言う通りです!!プロポーズを断るなんてあんた鬼!?」

宮里さんと同じく玲香も何やらムキになり口調が強かった。
二人の勢いに私の口から出た言葉は『そうですよね……』と言う、反省の言葉だった。

ライトからネイルチップを取り出し、仮硬化されたジェルの上にもう一度同じ色のジェルを塗っていく。
ムラが出来ないようあまり力を入れずに優しく塗る。

……京平が私に接するみたいだ。

優しく優しく、力を入れずに私に触る彼の手はいつもこんな感じだ。

ジェルを塗る手を止め、筆を筆置きに置き私も重く長い溜息をついた。

私の溜息に『後悔してる?』と玲香が聞く。
私は首を左右に振った。

「後悔はしてない。けどわからない」

「わからない?何が?」

「心のどこかで結婚を躊躇う自分がいるの。年齢的とか仕事とか関係なしに京平を受け入れる事をすんなり出来ない自分がいる」

自分でもわからない躊躇いに胸が気持ち悪い。
合わないピースを無理やり嵌め込もうとしているような違和感が苦しい。

愛している。
物凄く愛している。

なのにどうしてか、上手く嵌まらない。

「それはさ、愛してないんじゃない?」

宮里さんがキツい言葉を私に投げた。
私はすぐに拒否した。

「そんな事ありません!凄く愛してます!!」

堂々と『愛している』と宣言した私を宮里さんは首を傾げながら見た。
その顔は気の毒そうな人を見る顔だった。


「ゆーちゃんさ、"情"を"愛"だと思い込んでない?愛さなきゃいけないって自分を縛り付けてない?」

宮里さんの言葉は鈍器の様で、私の頭を殴る。
その言葉の振動は強く、私の脳味噌をゆらして酔わせる。

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