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魔法使いの誤算
第1章 /1



クロワッサンを口の中に残したままミルクティーを飲み、クロワッサンと一緒に飲み込む。
甘くて滑らかで、少しの渋みを舌に残すミルクティーとこのクロワッサンは予想通りよく合っていた。

「夕日ってクロワッサンの時だけ必ずミルクティー飲むよね」

玲香にそう言われて確かにそうだなと思った。
別に意識してその組み合わせにしている訳ではないが、思い返せばクロワッサンを食べる時は必ずミルクティーを飲んでいる。

「クロワッサン以外のパンの時はお茶とかジュースだけど、クロワッサンだけは絶対ミルクティーだよね。こだわり?」

「言われるまで気にしてなかった。なんだろ、クロワッサン=ミルクティーって感じなんだよね多分」

「あー、あんぱん=牛乳的な考えか」

口の周りについたトマトクリームのソースを紙ナプキンで拭きながら分かりやすい例えをした玲香。
私は残り半分のクロワッサンを口に入れ、ミルクティーを飲んだ。

いつからこの組み合わせを好みはじめたんだっけ?
そもそも、いつからミルクティーを好んで飲むようになったっけ?

ミルクティーの美味しさに気付いた時の記憶を頭の引き出しから探してみたが、どうも見つからない。

『紅茶嫌い』

頭の引き出しから見つかった記憶は紅茶を嫌っていた10代の若い私の記憶だった。

『俺は好きだけどな。後から来る渋味がさ』

そう言ったのは、10代の若い京平で購買で買ったクロワッサンとコンビニで買った500mlのストレートティーを飲んでいた。

『飲んでみる?』

飲みかけのストレートティーを差し出された私は、苦手なくせに一口京平から貰って飲んでみた。
舌に広がる渋味が気持ち悪くて舌を出して顔をしかめた。

そんな私を見て京平は笑っていた。


「夕日ー?どうした?」

記憶を辿り見つけた懐かしい思い出に浸りボーッとしていた私を、玲香の声が現在に引き戻す。
不思議そうな顔で私を見つめる玲香に私は『ごめんごめん』と謝り、頭の引き出しから見つけた思い出を玲香に話した。
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