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魔法使いの誤算
第1章 /1
「ただいま」
21時に帰宅した私は、パンプスを脱ぎながらリビングに居るであろう京平に玄関から帰ってきた事を知らせる。
私の声を聞いた京平が『おかえりー』と言いながらリビングのドアを開けて、ニッコリと笑った。
ブラウンのエプロンをして、料理の途中だったのか片手に菜箸を持っている京平の姿は晩御飯を作り夫の帰りを待っていた新妻のようだ。
立場が逆になっている事に申し訳なくなる。
「ごめんねいつも帰り遅くて。しかも本来なら私がするはずの料理までさせちゃって……」
京平だって仕事をしているのに毎回料理をさせてしまっている事に謝ると、京平は私の頭を撫でた。
昔から京平の撫で方は優しい。
サラっと流すように撫で、一回頭から手を離してからまたサラっと流すようにを繰り返す撫で方をする。
例えるなら、犬のブラッシングを物凄く優しくするみたいに。
「女が料理するなんて決まりはないよ?出来る方がすればいいし、俺の作ったご飯を美味しいって食べる夕日が見たくて作ってるからむしろ料理出来てラッキーだよ」
そんな優しい言葉を京平に言われた私は胸がキュッと締まった。
玲香が羨ましがるのも無理がないと、納得した。
こんなに優しい人の彼女になれている私は本当に幸せ者なんだ。
私と京平は元々幼馴染みで、来月のクリスマスイブで付き合って2年目になるが一度も喧嘩をしたことがない。
幼馴染みの頃から今まで一度も。
それは京平が優しく、私を大切にしてくれているからだ。