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自由という欠落
第7章 必要のないもの
「本当に興奮してきちゃった」
自然と吐露した欲望に、陽子自身、信じ難い思いがした。
「…………陽子さんが、こういうの嫌いじゃないなら、……別に、……」
加虐も被虐も不慣れな二人が迷走すると、こうした会話が成立するのか。
つと思い出した具合に客観視した。
ホックを外したブラジャーの他に、纏縛されただけの肉体。こうも無防備な女を支配下に置ける状況は、けだし陽子に限って最初で最後だ。ましてそれは、本来であれば侵しても想像にとどまるべきだった相手。
「すぐイッちゃダメって言ったのに」
「陽子さん、上手い、から……」
「私の計画が台なしじゃない。本当に痛い目、遭わせるわよ」
人間として尊厳も危ぶまれる格好さえ清らかで、乱れた肉体さえ可憐だ。…………
この光が陽子に凡庸を突きつける。このなよらかさに、陽子は狂おしいほど惹かれてきた。
陽子が気取った加虐趣味は、おそらく彼女の心根だった。
穢れと無縁のものを憎む目。変わらないものに焦がれる目。
陽子がディルドを所持していたのには面喰らった。禍々しい突起を備えた張型は、初めてまひるに恐怖を与えた。恐怖という法悦を。
玖美のような女達との遊戯において、まひるは愛で尽くす方が圧倒的に多かった。陽子との時も例外ではなく、彼女が期待した通り、まひるには少女のままの部分があった。女の指も許したことのない肉壺。陽子は、まひるの女の象徴の後方にある皺だらけの肉壺にとめどない蜜を塗りつけて、小指でほぐした。一度で異物を受け入れるまでは拡がらない、二人とも知識はあったくせに、そこに興奮していた。
毛細血管が切れたところで、正気が保てなくなるまで犯されたところで、肉体はしぶとく機能する。
事実、ファンシーな肉棒が尻の穴を裂いても、その状態で陽子が手首まで蜜壺を貫いても、まひるは恍惚としただけだった。感覚も遠ざかった激痛と出血の不快感で、ほとんど記憶は残っていない。陽子がピストン運動を荒らげた分、スプリングが鳴るマットレスに尾てい骨を打ちつけながら、まひるが喘ぐ必要はなかった。淡々とささめいていたということを、あとに陽子から聞かされた。
外、しばらく出歩けないかも。
怪我したかな、でもこういうことされたかったのかも、陽子さんに。…………