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自由という欠落
第7章 必要のないもの
それから十日近くが過ぎた。
丹羽がまひるを招待した元旦には、愛想笑いがぎこちなくないまでには回復していた。塗布した薬は、滞りなくまひるから陽子の爪痕を奪っていった。有名なショッピングモールなどが初売りもピークを迎える頃にもなると、年末の変態行為も夢だったのかといっそ疑ぐるまでになっていた。
まひるに陽子が与えようとしたものは、所詮、仮初めだった。まひるが陽子を愛せないのと同様、陽子もまひるを毀せない。互いにどれだけ求めるものを望んでも、得るのは気休め、不要なものが沈澱していくだけなのだ。
「はなちゃんもまひるも、気合いが足りないっ。初売りだよ?人がいるところ避けるなんて、海へ行って泳がないのと同じだよ?」
ショッピングモールのエスカレーターを降りていると、心陽が振り返るなり語調を強めた。
彼女の前方には買い物客達の行列、まひるの一段下にいるのはなの後方にも、黒い群れが続いていた。
今日は、年が明けて最初の買い出しだ。買い出しというのは名目で、冬休みの間に三人で会いたいというのはなによるグループラインに応じた二人が何をしようか検討した結論が、混雑との奮闘だった。
「はなちゃんは箱入りさんだし、仕方ないとして。まひるはセール、経験ないの?慣れてないの?」
「再マークダウンした頃にしか、行ったことない……」
「あー、それは賢いかも。じゃあ、マークダウンも慣れよう」
「ちょっと待って。私、化粧品が見たいわ」
のはなが珍しく声を荒げた。化粧品は、今朝から既に四店舗は見た。ついでにキャラクター雑貨の店と、こうした時期も一切プライスダウンしない、少しハイクオリティなアクセサリー専門店。
もっとも、心陽はのはなに甘い。心陽は急に歌が歌いたくなったと言い出して、まひる達をカラオケ店へ連れ込んだ。