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自由という欠落
第3章 選べない貴女
「学祭で、勘違い悲劇野郎なムーア人を演じることになりました」
「貴女が?サークルにでも入ったの」
「仮入部です。私のイメージが損なわれるなら、招待しません」
「行くわ。想像つかないから、観たい。◯◯大だっけ。妹が招待状をくれる約束をしていて。話していた妹、まひるちゃんと同学年なんだ。学部は違うから、きっと知らないだろうな」
「うん、知らないと思います」
もらいますね、そう言って、まひるが豆腐サラダの皿に残っていたガーリックチップを取り上げた。
「山本さんだけ食べていたら、私の鼻、敏感になってしまいますから」
陽子が何かしらの反応を示せる隙はなかった。言うなりまひるが、陽子の唇を封じたからだ。
「んっ……」
無音の口づけ。陽子が箸袋の先を折るくらい当然の仕草で、まひるは間近の唇に、キスをした。
ちゅ……ちゅる……
触れるだけの唇は、みるみる無欲をなくしていく。まひるの舌先が陽子の唇をつー……となぞった。濡れた愛撫が陽子の唇を綻ばせる。応えるように差し出す舌を、その愛撫が受け止める。唇を重ねて、舌を合わせる。
くちゅ。ちゅぱぁ……
「ぁ、……やまも、と、さん……んん」
「まひるちゃん……っ、ふ!っ」
キスには麻薬の効果がある。愛しているかも判断し難い少女のキスは、もっぱら陽子の脳髄だけをとろかせる。昼間はバイアスの一部でしかない陽子の奥深くに封じられていたものが、静かに剥がれていく殻を抜け出る。大人の女が、大人らしい行為をしながら、少女の感性を取り戻していく。
「ぁ、……ん、……ふっ」
「息荒い……」
まひるの指が陽子の乳房に降りていた。片手に収まらないほどある乳房を保護するラフなグレーのカットソーが、インナーの布を真下の皮膚にすりつける。