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人工快楽
第2章 真央と香苗
入口で看護師と警備員に、お母様と二人きりで会いたいと告げると、本来は出来ないが特別にと言われ、わたしは一人で病室に入っていった。
室内は思ったよりも広かったけれど、打ちっ放しの飾り気のないコンクリートの壁に囲まれた薄暗い部屋だった。
入口の扉以外にあるのは、外側に鉄の格子が填められている小さな窓。
まるで牢獄だ。
壁際に寄せられたベッドでお母様は眠っていた。
全身を真っ白で清潔な包帯でぐるぐる巻きにされ、点滴やカテーテルなど何本もの管がお母様に刺さっている。
とても痛ましい姿だった。こんな所に閉じ込められているのを見るだけでも腹立たしいのに。
さらにはお母様の寝顔を見ていると、気持ちが悪くなる程の違和感を感じる。
わたしが知っているのは、快楽の狂気と熱に酔いしれることのみが生だったお母様であって、こんな風にひどく穏やかで静かな顔で眠る女ではない。
わたしがお母様から排泄されて、恐らく生まれて初めて見る顔だ。
何、これ。
ベッドに横たわるお母様を見ていると、次第にわたしは苛つき、腹を立て始めた。
違う。
こんなの、お母様じゃない。
わたしが愛しているお母様は性の深淵に立つ存在として、決して快楽以外のものに穢されることのない純然たる無垢だった。
それは、性の欲望と欲求以外の観念は総て悪しきことだと、純粋なまでの排他をもって己の生は性のみであると高らかに謳い上げる存在そのものだったからだ。
世間一般で言うところの社会的倫理や道徳におけるあどけなさなど微塵もない女性。
それがわたしの前で安らかな表情で横たわり、安定剤や睡眠薬などにより強制的にとはいえ、清楚な女の顔をして眠っているなんて。
その身さえも焦がしつくし、骨の髄まで食らいつくす肉欲の炎は何処に行ってしまったというの。
あなたはそこで何をしているのですか。
お母様、起きて下さい。
真央です。
早く起きて、いつものようにわたしに快楽をおねだりして下さい!
いっぱいいっぱい犯してあげますから!
お母様っ!
馬鹿なフリはやめてっ!
わたしは苛立ちを隠すことなく、平和な眠りを安穏として享受しているお母様に向かって罵声を浴びせていた。
室内は思ったよりも広かったけれど、打ちっ放しの飾り気のないコンクリートの壁に囲まれた薄暗い部屋だった。
入口の扉以外にあるのは、外側に鉄の格子が填められている小さな窓。
まるで牢獄だ。
壁際に寄せられたベッドでお母様は眠っていた。
全身を真っ白で清潔な包帯でぐるぐる巻きにされ、点滴やカテーテルなど何本もの管がお母様に刺さっている。
とても痛ましい姿だった。こんな所に閉じ込められているのを見るだけでも腹立たしいのに。
さらにはお母様の寝顔を見ていると、気持ちが悪くなる程の違和感を感じる。
わたしが知っているのは、快楽の狂気と熱に酔いしれることのみが生だったお母様であって、こんな風にひどく穏やかで静かな顔で眠る女ではない。
わたしがお母様から排泄されて、恐らく生まれて初めて見る顔だ。
何、これ。
ベッドに横たわるお母様を見ていると、次第にわたしは苛つき、腹を立て始めた。
違う。
こんなの、お母様じゃない。
わたしが愛しているお母様は性の深淵に立つ存在として、決して快楽以外のものに穢されることのない純然たる無垢だった。
それは、性の欲望と欲求以外の観念は総て悪しきことだと、純粋なまでの排他をもって己の生は性のみであると高らかに謳い上げる存在そのものだったからだ。
世間一般で言うところの社会的倫理や道徳におけるあどけなさなど微塵もない女性。
それがわたしの前で安らかな表情で横たわり、安定剤や睡眠薬などにより強制的にとはいえ、清楚な女の顔をして眠っているなんて。
その身さえも焦がしつくし、骨の髄まで食らいつくす肉欲の炎は何処に行ってしまったというの。
あなたはそこで何をしているのですか。
お母様、起きて下さい。
真央です。
早く起きて、いつものようにわたしに快楽をおねだりして下さい!
いっぱいいっぱい犯してあげますから!
お母様っ!
馬鹿なフリはやめてっ!
わたしは苛立ちを隠すことなく、平和な眠りを安穏として享受しているお母様に向かって罵声を浴びせていた。