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人工快楽
第2章 真央と香苗
 何日か後、身体の拘束から解放されたのも束の間に、わたしは留置場のように鉄格子とコンクリートの壁に囲まれた特別隔離病棟へと押し込められた。

 お母様が閉じ込められている部屋と似たような作り。

 だからと言ってここがお母様の部屋の近くなのか、別の病棟なのか分からない。

 ただ分かっているのは、本格的に逃げ場のない状況に隔離され閉じ込められたということだけ。

 まあ、当然と言えば当然かな。

 お母様の病室での奇行、生まれと育ちの異常さ。

 今さら何をどうしても、その他の人間が望む更生なんて無理なのに、わたしをどうしたいのかな。

 これからこの監獄の中で、いつ終わるかも分からない無為な時間を過ごすのかな。

 それこそ、死ぬまで。

 そう考えただけで全身に怖気が走る。

 吐き気がする。

 お母様を連れてこんな所から一刻も早く出てゆかなければならないのに。

 お母様の側にいなくてはいけないのに。

 お母様と愛し合わなければならないのに。

 お母様に会いたい。

 お母様に会いたい。

 お母様に会いたい。

 気が狂いそうになりながらも自我を保つために自慰をしてみてが、身体も精神も高揚することはなく、絶頂にすら達しない。

 部屋中に排泄物を垂れ流してみる。

 汚物の臭いに包まれてみても懐かしさや安心感は感じるもの、今まであれほどまでにわたしを狂わせた欲情を呼び起こすことはできなかった。

 もはや医師も看護師も余程生命に影響がない限り、わたしの言動に一切干渉することはなくなっていた。

 わたしが何を言おうが何をしようが傍観しているだけだった。

 やがて、無味乾燥な時間が過ぎてゆく。

 わたしはお母様だけではなく、わたし自身を形作り存在させる性さえも剥ぎ取られようとしている。

 それだけは絶対に嫌だ。

 焦りと恐怖が折り重なって襲ってくる。

 早くここから出ていかなきゃ。

 嫌だ。助けて、お母様。

 あああああああああああっ。

 嫌だ嫌嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 こんなところでわたしがわたしでなくなるのなんて嫌だ。

 こんなところで普通に気が触れて狂ってゆくなんて絶対に嫌だ。

 わたしは肉欲の擾乱が溢れる性の狂乱の中、人間の本能がむき出しになったあの穢れの中でこそ狂い死にたいのよ。
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