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人工快楽
第2章 真央と香苗
 思考の中で解決策の見いだせない堂々巡りを繰り返しているうちに、この部屋に閉じ込められてから二カ月が経とうとしていた。

 わたしは憔悴し、絶望し、一日の全てを部屋の隅でシーツを頭から被るように包りながら蹲って過ごすようになっていた。

 頼んでもいないのに毎日施術されるカウンセリングと称した精神治療という名の精神改造になんて、絶対に屈しない。

 わたしは、あいつらの言いなりになんてならない。

 あいつらの望むような普通になんてなってたまるもんか。

 それでも、このままでは自己を崩壊するかもしれないという恐怖が、日増しに膨れ上がっていた。

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 わたしは一日に三回出される食事に排泄して食べることで、何とか自分を保とうとしていた。

 白いご飯におしっこをかけては、お茶漬のようにして食べた。

 おかずや汁物にはうんちを乗せて、口の中でしっかりと咀嚼して飲み込んだ。

 食事以外の時間は、ただひたすら濡れてもいない乾いたおまんこを弄ってオナニーをする。

 何をしても恐怖を拭えない。

 錆びついた金属が腐食して脆く崩れてゆくように、わたしの自尊もまた脆く崩壊する寸前だった。

 幻覚も幻聴もない。わたしはわたしをはっきりと認識している。

 わたしがわたしである限り、気が触れていないことを確認できる。

 大丈夫、まだ壊れていない。

 わたしは正常だ。

 それでも、カウンセリングと称して世界が穢れを否定している思考を押し付けられ、正常と仮定される彼らの思考へとわたしを矯正しようとしてくるストレスに押し潰されそうになる。

 わたしが壊れそうになる。

 お母様から引き剥がされてしまった今となっては、私がこんなところで壊れてしまってはいけない。

 心が壊れるということは、彼らに懐柔されてしまうことは、わたしだけではなくお母様そのものを否定してしまうことになる。

 そんなことはあってはいけない。

 あれほどまでに純粋で稀有な穢れた存在が否定されることなど、あってはならないんだ。

 お母様の身体はベッドに縛り付けられて微塵も動くことが出来ないかもしれないけれど、お母様は私が守らなくちゃいけないんだ。
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