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人工快楽
第3章 香苗喪失
わたしはお母様と再び愛し合いたかったのに。
わたしはもう一度あの日々を取り戻したかったのに。
お母様と同じ高みへ登り、その外界を寄せ付けぬ圧倒的な頂で一緒に歓喜に満ちていたかったのに。
こんな所に閉じ込められていても、それだけが希望だったのに。
段々と頭の中の霞が晴れるにつれて思考が廻り始める。
「ああ、そっか⋯⋯。だからお母様は、諦めて死んじゃったんだ⋯⋯」
わたしは思わず呟いた自分が達した結論に納得した。
「どういう事です?」
男の問いかけに答える事なく思考する。
閉じ込められ加虐から切り離されてしまった被虐は行き場をなくしてしまった。
加虐は加虐対象たる被虐が存在しなければ、その存在価値は全く無意味になる。
皮肉な事に加虐は被虐に依存する事でしか存在できない。
しかし被虐は違う。
加虐に依存すると同時に加虐なしでも被虐は立脚することが可能だからだ。
自ら望む被虐を被虐自身は自らに加虐する事が出来る。
被虐は自立出来るという一点において、完璧な永久機関を構築することが出来るのだ。
被虐特性の権現であるお母様にしてみれば、意識を失い動くこともままならない身体では被虐快楽を享受出来ないどころか、自分自身に対して加虐し獲得し得る被虐すら得られないことに耐えられなかったのだろう。
無力な個体と変わり果て絶望した結果が生命活動の停止だったんだ。
あの日、わたしが突発的に動かないお母様に跨がって放尿し、愛液に塗れた性器を顔に押し付けたあの日、お母様自身がわたしの声と体温と匂いを感じながらも自分が何も出来ない、感じない何ものかになってしまった事を本能で悟ったのだとしたら。
もしそうだとしたら、お母様に死を選択させたのはわたしだ。
お母様を殺したのはわたしだ。
そっか⋯⋯。
そういうことか⋯⋯。
なら、わたしがお母様にしてあげられる事は。
「お母様に会いたい⋯⋯」
骸となったお母様に会いたい。
そして。
「お母様とセックスしたい⋯⋯」
男がニヤリと笑った。
男は何やら言っていたようだけれども、わたしは気にもせずに全身を包む粘着質な泥のような気怠さの中で目を閉じた。
わたしはもう一度あの日々を取り戻したかったのに。
お母様と同じ高みへ登り、その外界を寄せ付けぬ圧倒的な頂で一緒に歓喜に満ちていたかったのに。
こんな所に閉じ込められていても、それだけが希望だったのに。
段々と頭の中の霞が晴れるにつれて思考が廻り始める。
「ああ、そっか⋯⋯。だからお母様は、諦めて死んじゃったんだ⋯⋯」
わたしは思わず呟いた自分が達した結論に納得した。
「どういう事です?」
男の問いかけに答える事なく思考する。
閉じ込められ加虐から切り離されてしまった被虐は行き場をなくしてしまった。
加虐は加虐対象たる被虐が存在しなければ、その存在価値は全く無意味になる。
皮肉な事に加虐は被虐に依存する事でしか存在できない。
しかし被虐は違う。
加虐に依存すると同時に加虐なしでも被虐は立脚することが可能だからだ。
自ら望む被虐を被虐自身は自らに加虐する事が出来る。
被虐は自立出来るという一点において、完璧な永久機関を構築することが出来るのだ。
被虐特性の権現であるお母様にしてみれば、意識を失い動くこともままならない身体では被虐快楽を享受出来ないどころか、自分自身に対して加虐し獲得し得る被虐すら得られないことに耐えられなかったのだろう。
無力な個体と変わり果て絶望した結果が生命活動の停止だったんだ。
あの日、わたしが突発的に動かないお母様に跨がって放尿し、愛液に塗れた性器を顔に押し付けたあの日、お母様自身がわたしの声と体温と匂いを感じながらも自分が何も出来ない、感じない何ものかになってしまった事を本能で悟ったのだとしたら。
もしそうだとしたら、お母様に死を選択させたのはわたしだ。
お母様を殺したのはわたしだ。
そっか⋯⋯。
そういうことか⋯⋯。
なら、わたしがお母様にしてあげられる事は。
「お母様に会いたい⋯⋯」
骸となったお母様に会いたい。
そして。
「お母様とセックスしたい⋯⋯」
男がニヤリと笑った。
男は何やら言っていたようだけれども、わたしは気にもせずに全身を包む粘着質な泥のような気怠さの中で目を閉じた。