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人工快楽
第3章 香苗喪失
 ずっと生臭い血のような匂いがしている。

 これが死臭だというものだしても、お母様の匂いだと思うとそれすらも愛しくてたまらなかった。

 死斑の浮かぶお母様の身体の隅々まで、時間をかけてゆっくりとキスをする。

 精一杯の想いと愛を込めてキスをする。

 ひと通り口づけをし終わると、わたしはお母様の骸に寄り添うように横になった。

「あのね、お母様⋯⋯」

 お母様の耳元に顔を近づける。

「わたし、泣いても良いですか?」

 お母様の死を聞かされた時から今まで、わたしは涙を流していない。

 現実を受け入れられなかったのかもしれない。

 悲しすぎると涙も出ないというものかも知れない。

 理由なんてなんでも良い。

 冷たく動かなくなったお母様を見ていたら、どうしようもなく泣けてきた。

 お母様にしがみつき、何度もお母様を呼ぶ。

「お母様、お母様、お母様」

 胸の奥底が焼け付く。

 込み上げるように涙が溢れてきた。

 寂しくて寂しくて寂しくて。

「お母様ぁ⋯⋯、お母さ⋯⋯、おか⋯⋯」

 悲しくて悲しくて悲しくて。

「うわああああああああああああああああああああっ!」

 わたしは号泣した。

 お母様が死んでしまったと言う現実に、初めて打ちひしがれた。










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