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人工快楽
第1章 香苗と真央
 通常の出産なら、呼吸法や医療行為などによって痛みの軽減や安全な出産へ至るための行程を辿るもの。

 だけど、今回は違う。

 分娩台に乗せられているのは、子宮の収縮運動による陣痛の耐え難い苦痛に顔をしかめて呻き声をあげながら新しい生命の誕生を前に苦闘悶絶する妊婦ではない。

 目の前にいるのは、快楽を享受するためだけに妊娠した少女だ。

 分娩台代わりのベッドの四隅に両手両足を縛り付けられて、まるでセックスの真っ最中だとでも言わんばかりに嬌声を上げ、次から次に襲ってくる陣痛の痛みという快楽に酔いしれて、獣のような呻き声とけたたましい笑い声を上げて腹ボテの少女は腰を振ってのたうっていた。

 そのあまりの異様な光景に助手は四回嘔吐して胃の中のものを残らず吐き出し、産婦人科医は得も言われぬ高揚感に満たされたまま、固く勃起したペニスに振れることもなくズボンの中で何回も射精したという。

 この狂気に満ちた出産劇は六時間続き、その間お母様は、人間が発しているとは思えない獣じみたうめき声と絶叫と笑い声をあげ、穴という穴から体液と排泄物を垂れ流しながら絶頂を繰り返した。

 産婦人科医がお母様のおまんこから出てきた赤ん坊を引き抜いたとき、お産の激痛という強烈な快楽を得て白目をむいて口から泡を吹いてイキ狂った挙げ句、最凶の絶頂と共にお母様は失神した。

 お産を終えたお母様は、それまで誰も見たこともない程の多幸感に満ちた惚けた顔をしていた。

 そうして産まれてきた彼女の赤子が、このわたし。

 子宮にいる間は知らない男の精液を浴び続け、やがて羊水と血液、体液と糞尿に塗れながら母親に抱きしめられることもなく産声を上げた赤ん坊。

 それは断じて出産などという神聖めいたものではなく、ただの排泄。

 お母様は、快楽のために赤子を膣から排泄しただけ。

 排泄された赤子、霧島祐介と佳苗の一人娘であり、香苗の排泄物。

 それがわたし、霧島真央。
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