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道化師は啼かない
第2章 少女の秘密
「麗奈には、私がどう見える?」
 今までの空気を払うような、落ち着いた声。
 でも、質問の内容は重く深い。
「どうって?」
「生きてる?」
 音が消える。
 電車のあんなに五月蠅かった騒音が一切聞こえなくなる。
 全神経が聞き耳をすませるような。
 道化が、どんな思いで尋ねたかひしひしと伝わってくる。
 この六年間、時折触れたものの避けてきたこと。
 湿った唇を舐める。
「貴方は……生きては、無いと思う」
 息を吐く音がする。
 それから世界が喧しくなった。
 さっきまでのように。
「そう。私はやっぱり死んでるんでしょうね。少なくとも、八年前に」
「八年前……」
「渚って子が初めてだった。気づいたら彼女の中にいたのね。凄く変な気分だった。そりゃそうよ。今までは麗奈みたいに自分の体で、自分で生きてたんだから」
 口から出そうになった問いを留める。
 しかし、心の声は聞こえてしまう。
「なんで死んだかって?」
 鼻で笑われる。
「昔話の続き。姉は弟の罪に耐えられなくなったの。それでね、彼を止めるために……正気を失って男を殴り続けてた弟の前に飛び出した。最初に頬を殴られて、意識が半分無くなって……それからは覚えてない」
 頬に手を当てる。
 ジンジンとしびれてる。
 感覚が再現されてるんだろうか。
 わからないけど。
「会いたい人って……その弟さん?」
 今度も答えない。
 でも、否定もしない。
「さっきの女の子は、どう関係があるの」
 しばらく沈黙が続いた後に、気になっていたことを訊く。
 道化が足を組み換え、合わせて座りなおす。
「見えたよね」
「うん」
「麗奈に会う前の二人には、あれが見えなかったの。それで、気づかなかったんだろうね。二人とも煙に飲まれて死んじゃった」
 唾が喉を下る。
 あまりにあっさりと出た、死という言葉。
 鼓膜が受け入れられずに茫然としてしまう。
「あれはね、彼の標的っていう印なの。生きてた頃は見えなかったけど……あんなに濃い殺意」
「弟さんが、彼女を殺すってことですか」
 直球で言ってしまってから、訂正しようとするが、道化は頷いた。
「私も見たのは二年ぶり。まだあんたは十四歳だったから、言えなかったのよね」
 頭が混乱している。
 むしろ、麻痺して事実を受け流している感覚。
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