この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
道化師は啼かない
第8章 それぞれの終幕

 蕗が海に張り出した堤防を進む。
 スニーカーで足取り軽く。
 行ってしまう。
ーボク蕗。もしくはシロー
 ああ。
 もう一人の自分はもう捨てたのか。
 それともクロと呼ばれたいのか。
 ハルは口の端を持ち上げた。
「あのさ」
 蕗が振り返る。

「ハルはハルなんだよね」

 その意味の深さを噛み締める。
 そして、頷いた。
「……羨ましい」
 それが最期の言葉だった。
 海は代わらず波を寄せてくる。
 浮かんだ泡もすぐに消し去って。
 何も無かったように。
 ハルは餞としてハンカチを海に落とした。
 ああ。
 母さんの気配が消えた。
 ゆらゆらと足元に紫の煙が絡み付く。
「嘘吐いてごめんね」
 踵を返して岬を去る。
「そんなもの、確信持てる人間なんていないよ。自我は鏡に宿るのだから。自分が自分だという認識なんて尺もなくどうして言い切れる」
/119ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ