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道化師は啼かない
第3章 死体越しの再会
ぶちゅりと中に指が入る。
何度も男を受け入れたそこはただ収縮するだけ。
「は……ああ、やだ」
長くて冷たい指が動く。
まずは形を確かめるように。
ゆっくりと。
鈍い快感に腰が揺れる。
もっと擦りつけてほしくて。
肩の痛みを忘れるほどに。
狂わせてほしくて。
ハルは指を更に奥に沈みこませてゆく。
それからぎりぎりまで抜いて、まためり込ませる。
何度も。
「はあ……はあっ」
真紀の息が荒くなる。
まるで体の中の何かを測られているような機械的な動きに戸惑う。
断続的に襲う快感は足りない。
痛みも脳を貫く。
決して昇天するほどの刺激をくれない。
舌を出して息をする。
苦しい。
なに。
これ。
苦しい。
ぱっと眼を見開く。
ハルがにこりと笑う。
「だから僕は気持ちよくはさせてるんですよ」
くっと首に手をかける。
「今日は気が乗らないからセックスなんて面倒なことまではしないけどね。この不快なまま死ぬのって納得いかなくて最低でしょ」
真紀は意味がわからなくて瞬きをする。
中から指が抜かれると同時にその喉が締め付けられる。
びくりと全身が悲鳴を上げて危険を叫んだ。
縛られた両手を振り下ろしてハルの手を掴む。
「そうそう。置かれた状況を思い出してくれないと楽しめない」
ぐいっと真紀の体を持ち上げるように手を高く掲げる。
首をしっかりつかんだまま。
それからナイフを一気に抜きとると、血飛沫を浴びながらそれを回した。
「ん、っく……んんん」
真紀の足が地面から離れる。
ハルは彼女の中に入っていた濡れた指をナイフの先端に這わせる。
透明な液と赤い血が混ざる。
それを口に近づけて、見せつけるように舐め上げた。
彼女から紫の眼を逸らさずに。
ざわっと真紀の背中に悪寒が走る。
「はっ、はっ……んく、はっ」
「まだ落ちないでよ。これからが食事の時間なんだから」
露わになった白い肌に刃を当てる。
冷たく鋭い切っ先を。
「なるべく長く啼いてね」
「んんんっっ」
「ごめん、聞こえない」
すっと横に手をスライドさせる。
赤い痕を残して。
ピピッと壁に血が飛び散る。
真紀の叫びは公園の外まで響くことはなかった。