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道化師は啼かない
第3章 死体越しの再会
 黒と赤に汚れた室内を見渡す。
 自分の作品を鑑賞するように。
「今度のアリスちゃんは随分脆かったですね」
 地面に転がった少女を見下ろして呟く。
 黒いスーツは血を含んでも色を変えない。
 ただ臭いだけが彼を包む。
 ハンカチでナイフを拭い、胸ポケットに二つとも仕舞う。
「美味しかったけど……処女には劣るよね」
 口端についた液体を手の甲で擦り落とす。
「ふ……可愛い寝顔」
 息のしない顔を撫でて、立ち上がる。
 平然と血まみれの床を踏みつけて、トイレから出る。
 仕事は一件じゃない。
 手帳を取り出して確認する。
「近場の仕事は重ねるなとあれだけ言ったのに……まったく、死ねばいいのに」
 困ったように顎を掻いて、ページを捲る。
 一度だけ四肢のない真紀の亡骸を振り返って、ハルは歩き出した。
 メガネをかけて。
 カツカツと。

 目当ての駅に着き、ガードレールにもたれかかる。
 午後に近づき人通りが多くなる街。
 こういう時間を指定する変態の依頼主に一度会ってみたい。
 むろん、彼にとって昼も夜も大差はないのだが。
 駅前広場といえばいいだろうか。
 安っぽい花壇とベンチが並ぶ。
 その中央には悪趣味な色の時計台。
 東西南北の面がどれも違う色。
 混ざり合うことのない組み合わせ。
 誰があそこで写真を撮るだろうか。
 眺めていると、時計盤が左右に割れてハープを抱えた女性像が現れ音楽が流れる。
 十二時か。
「なにしてるの」
 耳元に突然囁かれた声にハルは眉をしかめる。
「話しかけてくるなって言わなかった?」
 ハエでも追い払うように手で肩を叩く。
「アリスは?」
「一人終わった。今待ち合わせしてるところ」
 背後の少年がレールを飛び越えて隣に立つ。
「オレはもう三人のシヴァを眠らせてきたところだよ」
 根元まで真っ白い髪。
 過去の事件で失った色は戻ることはない。
 あどけない顔に小さな体には似合わない台詞。
 ハルが嫌いな同業者。
 彼は避けているが、こうして街角で見かけるたびに近づいてくる。
「新聞見た? 連続殺人怪事件、オレとハルが同一人物だって見られてるよ。そりゃそうだよ。オレがハルの殺り方真似てるんだもん」
 べらべらと。
 ハルは腕を組んで溜息を吐く。
 返事なんてしたくもない。
 胡桃と違って話すだけ厄介な相手だ。
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