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道化師は啼かない
第3章 死体越しの再会
 会計を済ませて店を出る。
 駅内の飲食店街。
 人通りも多い。
 なのに、突然寒気が襲ってきた。
「ねえ……」
「うん。やっぱあんたは凄いかもしんない。彼が近いのわかるでしょ」
 正直、何が迫ってきているのかはっきりはわからない。
 けれど全身が警告を発している。
 なんとか彼女を追いかけて歩いてはいるが、「今すぐ引き返せ」と体が叫んでいる。
 コツコツと。
 足音が耳に響く。
 なに。
 なんなの。
 自分の足音。
 彼女の足音。
 通行人の足音。
 それを貫くように響く重い足音。
 コツコツ。
 首筋を掠る黒い殺意。
 カタカタとブレスレットが鳴る。
 手が震えてるんだ。
 どうして。
 理由もわからないのに。
「なにやってんのよ。躰を貸してっ」
 道化が叫んだ。
 同時に我に返ると、追っていたはずの女子高生が消えている。
 雑踏の中に。
「今なら間に合う」
 ぐぐっと足に違和感がかかる。
 道化が動かそうとしている。
「やめて。私が行く」
「うるさい」
 二つの意思に引きちぎられそうな脚。
 痛みが背中まで走る。
 はたから見れば、ヒールを初めて履いた幼児のようなぎこちない動きだったかもしれない。
 手でバランスをとり、ぐっと腰に力を入れて。
 お互い譲らずに前に進もうとする。
 もちろん、無理がある。
 がくんと膝が曲がり、その場に座り込んでしまった。
「あんたの我儘に付き合ってる暇はないの。いい加減にしないと今すぐ麗奈を殺して他の子に憑りつくって手段を選ぶわよ」
「……できないくせに」
 がっと右手が首に伸びる。
 涙腺に刺激が走り、眼が潤む。
 息ができない。
 苦しい。
 頬の筋肉が痙攣する。
 さっきの言葉がよみがえった。
-自分の手で自分の首を折ることも-
 眩暈がする。
 限界の一歩手前で力が抜けた。
「さっさと歩きなさい」
 聞いたことのない必死な声。
 私はこくこくと頷いた。
 それから自由になった足で立ち上がり、駆けだす。
 周りの視線なんて気にしてられない。
 早く彼女を見つけなければ。
 改札口まで来て躊躇う。
 すぐに道化がバスターミナルの方に踵を回した。
 それに従って出口を目指す。
「変ね。駅に入ってまた出るなんて……」
 意味ありげな囁きが鼓膜に残る。
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