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道化師は啼かない
第4章 錯覚と残り香

 ストローの透明な袋を指で摘まみ、直輝が呟く。
「仕事帰りにここに来てんのな。血の臭いが残ってるけど」
 蕗と同じこと云うね。
 ハルは微笑みだけで答えた。
「はっはーん。オレのこと要注意人物って位置付けてるだろ。ああ、それでいんだがな。同業者なんて誰でも」
「危険人物だと思ってますよ」
「ハッ……そうだろうねえ」
 クシャクシャと袋が形を変えていく。
 蛇のように。
 うねるように。
「専門は?」
「教えませんよ」
 全ての年代性別に対応する殺し屋は意外に少ない。
 蕗は三十代から五十代の男性。
 ハルは異名の通り若い女性。
 だから蕗とは衝突もなくやっていけている。
 会わないに越したことはないが。
 一番避けたいのが標的が被ること。
 同業者と競うなんて吐き気のすることはほかにない。
 面倒。
 その一言に尽きる。
「じゃあ、今度あんたの仕事邪魔していい?」
「……は?」
 直輝はニイッと笑った。
 その手元にはどう作ったのかプードルの形のストローの袋が。

 胡桃が訴えかける目で睨みつけてくる中勘定を済ませて喫茶店を出る。
 コツコツ。
 革靴の音と、もう一つの足音。
「オレあんたの仕事観て見たかったんだよね。今新聞で騒がれてるのあんただろ。連続殺人怪事件? あのネーミングセンス零の。時計台のショーはオレも警察が死体回収する前に観られたんだけど」
「ちょっと黙ってくれません?」
 道端で大声で……
 蕗より厄介だな。
 声をかけなければ良かったと今更ながら。
 直輝は足取り軽く付いてくる。
「今日はこれから入ってんの」
「そういう貴方こそ」
「オレは不定期だから。不真面目だし」
 溜息を我慢する。
 次の仕事は深夜だが、選ばれた場所がビルの屋上なので下準備をしなければならない。
 全く標的の代わりに雇い主を手に掛けられたらどれほど楽で犯罪が減っていくだろう。
 くっとメガネを上げる。
 眼に気持ちが出てしまっていた。
「どうせ仕事まで時間あるんだろー?」
 ピタリと足を止める。
「なにがです?」
「あ、図星だね」
 今なら蕗にキスできるかもしれない。
 いや、それは無理か。
 しかしこの男、どうするか。
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