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道化師は啼かない
第4章 錯覚と残り香
「ハルは何歳からこの仕事やってんの」
 桟橋にさしかかったところで直輝が尋ねる。
 隣町に行くときには電車でなく歩いて移動する。
 その方が記録に残らないから。
 だが、そのせいで長い橋をこの男と談笑しながら渡らねばならない事態となっているのだが。
 酷く面倒だ。
「貴方は住所を訊かれたら誰にでも答えますかね」
「嘘のなら」
 ふふんと鼻を鳴らして云う直輝に溜息すら零れない。
 見た目からすると二十二歳ってところか。
 ここまであからさまに素性を探ってくる奴はどの年代にもいないんじゃないか。
 メガネを押し上げ、陽光が反射するビル群を見上げる。
「無言も一つの答えってな。女性殺しさん」
「僕の話はいいでしょう。貴方はどうしてこの地区に流れてきたのか、何故僕に接触しているのか、このままどこまでついてくるつもりか、簡単に教えてくれないかな」
 横を自転車が通り過ぎて行った。
 ロードレーサーに未来的なヘルメット、サングラス。
 たまに見かける彼らは一体どこに向かっているのだろうか。
 街の中を駆けて駆けて。
 軽そうなフレームには改良の跡。
 ペダルは重力から解放された様に容易く回り、音も立てずに去っていく。
 坂など関係はない。
 こんな橋なんて加速のためのようなものだろう。
「オレの話もつまんねえけどな。質問されたら答える主義だからまあいいけど。まずオレの地区の依頼人のネットワークが壊滅状態になってな。事情は訊くの端折ったけど、どうやら組織の中枢で内部告発でも起きたみたいでぐちゃぐちゃになったらしい。オレは末端に位置してたから逃げても追っても来なかった。情報だって全然回ってこないだろ。殺し屋なんて今どきバイト要員的立ち位置で派遣より簡単に切られちゃうしな」
「云えてる」
「だろ? 次の質問は……あー、あんたから話しかけてきたんじゃなかったか。あの情報屋の喫茶店で」
 そういえばそうだった。
 でもその理由を思い出して微かに首を振る。
「仕事の邪魔されたくなかったから縄張りを示そうと思っただけだよ。まさか貴方が元から邪魔してくるつもりだと思ってなかったからね」
 それに、胡桃の店を知っている時点でこの街で何かしでかすのは間違いない。
 たった今情報屋って言ったしね。
 直輝がぐいっとハルの腕を引いた。
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