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道化師は啼かない
第6章 不協和音
それから半年が過ぎた。
蕗は相変わらず仕事に行った日には酷い恰好で帰ってくるが、それ以外は平和だった。
ハルもたまに一緒にトランプに付き合ったりした。
決まってブラックジャック。
よくルールを理解できるなと初めのひと月は付いていくだけで大変だった。
バストばかりで蕗にケラケラ笑われた。
今ではスプリットもダブルバインドもお手の物だけど、ハルは手加減してくれないから毎回順位をつけると私は相変わらず最下位なのだ。
マスターはそれをカウンターで珈琲を飲みながら眺めていた。
その時間が日々の中で一番というほど私は幸せだった。
みんな笑っていた。
心から。
家族の方はもう修復不可能な溝を四人で協力して毎日一センチずつ深めていくような生活だった。
「胡桃。お母さんね、離婚を考えてるの」
「そしたら私と唯はお母さんが連れて行ってくれるんでしょ」
「ええ」
「でもそしたらお父さんは一人ぼっちだね」
「それって問題かしらね」
毎週告げられる離縁宣言ももう慣れるほど。
水面下でそれが本当に実行に向かっているなんて知らなかったけど。
私は母は笑顔が美しかったんだと知った。
笑わない母は目を合わせられないほど覇気がなかった。
「おねえちゃーん、ごはん出来たって」
「そう。今行く」
「部屋、入っちゃダメ?」
「だめ」
扉越しの会話も半年目。
足音が遠ざかる。
タンタン……
「胡桃は父さんの味方になってくれないか」
「なんの?」
「……なんのだろうね」
修復不可能。
可能。
不可能。
望みなんて初めの二か月でなくなって。
あんなに笑って会話していた日々が別の世界の出来事みたい。
ひょっとしたら、私がハルたちの世界に足を踏み入れ始めていたのかもしれない。
「おねえちゃん、相談があるの」
「あとにして」
「おねえちゃん」
「……」
土日になると必ず家を空ける私はその間に家で何が起きているかも知らず。
冷えていく関係を傍観者のふりして見ていた。
私はその賭け事には参加していませんよと。
だからその、あの最悪の夜を招いてしまったんだ。
蕗は相変わらず仕事に行った日には酷い恰好で帰ってくるが、それ以外は平和だった。
ハルもたまに一緒にトランプに付き合ったりした。
決まってブラックジャック。
よくルールを理解できるなと初めのひと月は付いていくだけで大変だった。
バストばかりで蕗にケラケラ笑われた。
今ではスプリットもダブルバインドもお手の物だけど、ハルは手加減してくれないから毎回順位をつけると私は相変わらず最下位なのだ。
マスターはそれをカウンターで珈琲を飲みながら眺めていた。
その時間が日々の中で一番というほど私は幸せだった。
みんな笑っていた。
心から。
家族の方はもう修復不可能な溝を四人で協力して毎日一センチずつ深めていくような生活だった。
「胡桃。お母さんね、離婚を考えてるの」
「そしたら私と唯はお母さんが連れて行ってくれるんでしょ」
「ええ」
「でもそしたらお父さんは一人ぼっちだね」
「それって問題かしらね」
毎週告げられる離縁宣言ももう慣れるほど。
水面下でそれが本当に実行に向かっているなんて知らなかったけど。
私は母は笑顔が美しかったんだと知った。
笑わない母は目を合わせられないほど覇気がなかった。
「おねえちゃーん、ごはん出来たって」
「そう。今行く」
「部屋、入っちゃダメ?」
「だめ」
扉越しの会話も半年目。
足音が遠ざかる。
タンタン……
「胡桃は父さんの味方になってくれないか」
「なんの?」
「……なんのだろうね」
修復不可能。
可能。
不可能。
望みなんて初めの二か月でなくなって。
あんなに笑って会話していた日々が別の世界の出来事みたい。
ひょっとしたら、私がハルたちの世界に足を踏み入れ始めていたのかもしれない。
「おねえちゃん、相談があるの」
「あとにして」
「おねえちゃん」
「……」
土日になると必ず家を空ける私はその間に家で何が起きているかも知らず。
冷えていく関係を傍観者のふりして見ていた。
私はその賭け事には参加していませんよと。
だからその、あの最悪の夜を招いてしまったんだ。