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道化師は啼かない
第7章 人形はどちら
「麗奈」
 なに。
 自分が息を吸う。
 すべてを吐き出そうとでもするように。
 道化は私にだけ聞こえる声で話し始めた。
 心の中なのか、口にしているのか、もう判断はつかない。
「この六年間、あんたと過ごせて本当に私は楽しかったよ。憎々しいくらいにあんたは面白い奴だった。あの夜、あんたの両親が死んだ瞬間と同時刻、この街で神楽京子は死んだの。あたしが前に憑いていた女の子。そのときは十五歳だった。あんたには前の二人はハルが凌辱して殺したって言ったけどね、本当は違う。あたしが殺したの」
 それは、今という状況を上塗りするほど重い告白。
 私の眼は何かを探して回るめくちゃんを追いながらも、鏡の向こうの道化を見ていた。
「この六年間なんでハルに会いたがっていたかっていうとね、私は教えたいの。あいつはあたしを殺しちゃいないんだって。一人目はハルに会ったときにあたしが体の制御を出来なくて彼女の肉体に限界が来て壊してしまった。二人目の神楽京子の時はこう……首を絞められたときに舌を噛み切ったの」
 細い冷たい指が首に触れる。
 それが貴方が首に敏感な理由?
 違うよね。
 もうひとつあるはずよ。
「流石麗奈ね」
 初めて褒めたね。
 全然光栄じゃないけど。
「減らず口。そう。でも、そうね。昔あんたの従兄を殺しかけたお詫びに今全部教えるよ。あたしの名前は久谷マキ。久谷ハルの姉で、弟のことが大好きだった。それであの日、暴走したハルを止めに入った時、殴られて、蹴られて、最後には京子のときと同じ。首を掴まれたの」
 両手で首をなでる。
 頸動脈がどくどくと脈打つ。
「初めはハルの手を押さえて引き剥がそうとしたんだけどね、どうしても男のほうが力が強いの。あたしはすぐに無理だと知った。だから……」
 カツン。
 びくっと顔を上げる。
 道化が反射的に口をつぐむ。
 めくちゃんも止まった。
 突然の物音に。
 カツン。
 これは、夢で聞いた……足音だ。
 踵から地面を打ちつけるような。
 音を響かせる足音。
「暫くぶりですね、そのアリスちゃんをどうやって騙してここまで連れてきたのか想像もしたくありませんけど。女池水鶏、君には初めまして。久谷ハルと申します」
 めくちゃんの煙がふっと消し飛ぶ。
 開けた視界に現れたひと組の男女を見て、心の中で道化が声なき悲鳴を上げた。
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