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道化師は啼かない
第7章 人形はどちら
 ぶわっと私の意識に久谷マキの記憶が流れ込んでくる。
 出生からずっと。
 家族の中で生きる彼女の人生が。
 けど私はそれを見なかった。
 今を見たいんだ。
 それだけで十分のはず。
 ねえ。
 マキ。
 六年間、家族でいた貴方のほかの家族なんて私嫉妬しちゃう。
「馬鹿麗奈」
 馬鹿マキ。
 私たちは一緒に足を踏み出した。
 マキは私にもほんの少しだけ主導権を残してくれていた。
 タンタン。
 ローファーを鳴らして、走った。
 こちらを振り向いた久谷ハルと、めくちゃんを殺した女のもとに。

 目を見開いて、三人は向かい合った。
 口火を切ったのは、水鶏だ。
「あら。芦見麗奈ね、あんた。この子のクラスメイトの……追ってきちゃったの?」
「ああ。そういうことですか」
 意表を突かれたハルも落ち着きを取り戻す。
 けれどマキは声を絞り出した。
「ハル。あんたはいつになったらあたしとこいつの見分けがつくの、この間抜け。間抜けな弟だよ……本当にさ」
 おぼつかない足取りでハルの腕にしがみ付く。
 真っ赤に腫らした目で。
 言葉を使わずに訴えかけるように。
 ハルが口を押さえる。
 その指の隙間から驚愕を隠しきれない声が漏れる。
「まさか……そんなはず」
「ハル? なにしてるの。目撃者を出さないのがあんたの仕事でしょ。さっさとその子を」
 そこで水鶏の冷徹な声が途切れた。
 ハルに鳩尾を蹴飛ばされたからだ。
 壁に激突してせき込む彼女をハルは温度のない目で見下す。
「五月蠅いって言いましたよね。エセ姉さん?」
「な、に……言ってるの」
 ぎゅっとマキを抱えたハルは揺るがなかった。
 その弟の腕の中で姉は咽び泣いていた。
「説明してください」
 ハルが低い声で圧する。
「僕の姉を偽る貴方は誰です?」
 水鶏の顔がゆがんだ。
「だからさっきから何言ってるの、ハル! その女が何を吹き込んだか知らないけど、あたしが久谷マキ! あんたの仕事はっ、あんたがあたしを殺した罪を償うためにひたすら姉を殺し続けること。あたしが経験するはずだった人生を歩んでる女たちをっ。あの異名は飾りじゃないでしょっ」
 叫びきった彼女をマキがギッと睨みつける。
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