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道化師は啼かない
第7章 人形はどちら
「そうやってあんたがけしかけたから! だから八年もあたしたちは苦しみ続けたんだよっ、クソババア! 父さんと心中してあたしたちを捨てたくせに生きてるハルが憎くて逆恨みでしかないくっだんないことを……そのせいで……何人の」
「黙ってろ部外者は! これは姉のあたしとハルの」
「姉? 何言ってるんですか。久谷イスズ。いや、母さん?」
 ヒュッと息をのむ音がした。
 水鶏の身体に入ったイスズが、腹を抱えて立ち上がる。
 ずず、と背中を壁に擦りながら。
 黒髪に隠れた顔が揺れる。
 肩も。
「く……くくく」

 嗤っていたんだ。

 おぞましく醜い、姉弟が恐れたあの笑顔で。
 ハルの腕に力が籠った。
 マキは恐る恐るそこから抜け出す。
 自分の足で立って対峙すべきだと思ったから。
「ははははっ、あーははは……あー、あらあらあらあら……ばれちゃったよもうふふふふふ、けどかかり過ぎよねえ!? ほんっとあんたらは馬鹿すぎて要らない子供たちだった。あっははははは」
 それは狂ったお茶会そのものに見えた。
 久谷家の母と子供がそろっているというのに、母も姉も他人である少女の形をしているのだから。
 ハルは頭を押さえて息を整えようとするが、なかなか肺に空気が入ってこない。
 一体何が起きている。
 だれがこんなふざけた脚本を書いた?
 ルイス・キャロルじゃないだろう。
「とこっとん狂わせてやりたかったの! いつもいつも生意気なあんたらが本当に憎かったっ。なのに苦しむのはいつも私と父さんだけ。折角マキが借金取りの屑たちに捕まったってのにハルは最後まで期待を裏切るような真似しちゃってさ。けど、マキ。あんたはよくやった。ハルを止めようとして……くくく、逆に殺されちゃうなんてねえっ? あれは傑作だったよ! その時にこれを思いついたの。ねえ、素敵だったでしょ? 母さんからの死後の贈り物よっ。あっははは……はー、まさかハルがプロの殺し屋にまでなっちゃうとは思わなかったけどね。数えてたわよ。八年間通して仕事で二千百六十三人。それは仕事だもの。母さん悲しいけど何も言わないわ。けど、ふふふ。私が憑いていた人数は六十九人! マキ! あんたがその芦見麗奈に六年ものんびりかまけているのは最高に嗤わせてもらったわ。その間にかわいい弟は五十人以上を手にかけてるんだから」
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