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道化師は啼かない
第7章 人形はどちら
 マキが真実を話す間、それらは私の中で鮮やかな映像を伴って流れていた。
 愚かな女性殺しを生み出したきっかけ。
 自分で自分の首を折ることも可能。
 こんな残酷な方法で知ったの?
 だから首を触られるのが嫌だったの?
 馬鹿ね。
 そんなことするわけないじゃない。
 ねえ。
 まだ貴方の役目は終わってないよ。
 消えないでよ。
 逝かないでよ。
 この躰をあげるから。
「死なないでよぉおおっ!」
 自分を抱きしめて。
 道化を抱きしめて。
 叫びながら崩れた私をハルが支える。
 イスズは茫然と四つん這いで近寄ってきた。
「マ……キ」
 私の肩に触れて、バッと身を離す。
「あ、ああ……どうして。どうして? マキ。マキっ! 返事しなさいよ馬鹿娘!」
 めくちゃん、何言ってんの。
 私は泣きながらこの現実から逃げて心の底に沈んでいた。
 ハルが抱きしめるべきは私じゃない。
 私じゃないんだよ。
 この場でこの躰でいるべきなのは。
 言いたいだけ言って逃げるなんて卑怯だよ。
 聞いてんでしょ、道化。

「死ねばいいのに」

 その声だけが、私を現実に呼び戻した。
 ハルが地面を見つめてぶつぶつと呟いた。
 その言葉を。
「だからずっと言ってきたじゃないですか僕は。貴方に。母さんにじゃない。貴方に言ってきたんですよ。だっていつまでもそれが伝わらないから。どれだけ僕を追ってきたところで救われないのは目に見えていたじゃないですか。なのに昔から僕の言葉だけは全然聞かないんですから。本当に」
 イスズが頭を掻き毟って泣き叫ぶ。
 娘の名前を。
 それほど哀れな姿を私は見たことがなかった。
「ねえ、ハルさん。それ、どういう意味なんですか」
 私は何の感情も込めずに尋ねた。
 そこに殺意はなかったから。
 本来忌々しいはずの文字列には、何処か温かみすらあったから。
 夢でも。
 あの広場でも。
 
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