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S級有害図書
第9章 「霞萌の場合」
 その夜、満席のステージ上でスポットライトを浴びながら、豊満な乳房を激しく揺らして全裸で踊る真由美と麗子。下品に囃し立てる客席の男達。
 ステージ袖で立ちすくむ萌。艶やかな和装と控えめな化粧が、萌を一層美しく魅せる。今にも泣き出しそうな萌に、俺は冷たく言い放つ。
「お前にはまだ芸など期待していない。ただ黙って客に肌を晒してこい。早く慣れてしまう事だ」
 萌は何も言わず、俯いたまま震えている。そうは言っても簡単なことではないだろう。まだ年端もいかぬ少女が大勢の男達の前で裸を晒さねばならないのだ。背徳感と罪悪感が俺の中で混ざり合い、広がっていく。
 ステージを終えた真由美と麗子は派手なガウンを纏い、萌の出番を告げる。
「さあ、本日のメインイベント。今日が初日の萌ちゃんです」
「初々しくてピチピチの最高の子。見なきゃ損ですよ」
 ステージの袖に戻ってくる真由美と麗子。
入れ替わりに萌がステージ中央まで出ていく。
男達が歓喜の声で萌を迎える。スポットライトが萌を照らし、ムードのある曲が場を盛り上げていく。
「お嬢ちゃん、可愛いなぁっ」
「おじさんに可愛いおっぱい、見せてぇっ」
男達の下卑た掛け声が、戸惑う萌に容赦無く浴びせられる。
意を決して萌の手が、ゆっくりと帯を解いていく。帯が床に落ち、艶やかな着物が萌の身体から滑り落ちる。赤い肌襦袢一枚で男達の前に立ち尽くす。
萌が助けを乞う目で俺の方を見てくる。俺は冷たく首を横に振るしかできない。萌の瞳から一杯になった涙が溢れる。そんな萌を見て、一層興奮を高める男達。
襦袢の腰紐が解かれぬまま、片手で胸元を押さえて、肩口から脱ぎ始める萌。袖口が落ち可愛らしい肩が露出して、透明感のある肌が男達の前に晒される。客席に背を向けて腕を袖からそっと抜いていく。両袖から腕が抜けると襟口が落ち、萌の美しい背中が男達の下卑た視線に解き放たれる。
・・・耐えろよ。お前には耐えるしかないのだから。
 俺は、いつの間にか萌の心情に引っ張られている自分に気がついた。今まで女達に同情することなどなかった俺がだ。
 客に背中を向けたまま、桃色の腰紐が解かれると、襦袢が萌の背中を回り込むように落ち、背を向けた少女の一糸纏わぬ裸が男達の前に晒される。
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