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地味子が官能小説を書いたら
第3章 片思い
紗栄子のAVデビューまでを書き終えて、私はスマホを置いた。
明日の土曜日、再び文剛の部屋へ行くことになっている。そのために下書きをしていたのだ。下書きしたファイルは、文剛と共有しているクラウドのフォルダにアップロードした。
明日、文剛のパソコンを借りて清書し、文剛のアドバイスを受けた後にサイトにアップする予定だ。
先週の土曜日、文剛は私と一緒に官能小説のコンクールに出品すると言ってくれた。
先週の土曜日の出来事を思い出し、私はベッドの上で身体を右へ左へ反転させ、身もだえした。
思い返すと、口の奥が酸っぱくなる。
「僕も、そのコンクールに出品してみるよ」
「え、早川君が……官能小説を?」
「うん、僕も書いて綾瀬さんとお互いに評価し合う、で、お互いに出た意見をフィードバックさせて、完成度を上げていくんだ」
「そうすれば、悩んで先に進めないなんてこと、減ると思うんだよ」
(たしかに、誰かの意見があると問題は解決しやすい)
「でも、大丈夫なの?早川君って、今度の丸川文庫の新人賞に出品するんじゃないの?」
「うん、でも向こうは締め切りが9月だから、まだ時間はある」
官能小説の締め切りは来月、6月の末日だ。それに比べて少しは余裕がある。だが、同時に二つの小説を書き進めることができるのだろうか?
文剛が私を手伝ったとしても、デメリットしかない。
「大丈夫かな?二つの作品を同時に書くって、難しくない」
「確かに、だけど、僕はバイトもしてないから時間はあるし、うまく頭を切り替えていけば書けないこともない」
さすがは文剛だ。私なんかより頭が良くて才能もあるから、二つ同時に書けてしまうのかもしれない。
でも……
「あの……どうして」
「ん?」
「どうして、早川君は私のために、そんなに協力してくれるの?」
「ええ?」
「え……と、僕も作品の幅を広げたいなと思ってたところで……」
「そうしたら、綾瀬さんが官能小説を書いてるのを知っちゃったから、新しいジャンルとして良いかな……なんて」
「別に、綾瀬さんのため、というわけじゃないんだ」
(そっか、そうだよね……わたしって、思いあがった事を言っちゃった)またもズレた発言をしてしまい、私は後悔する。
「そうだ、もうお昼だし、ランチにしようか?」