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地味子が官能小説を書いたら
第3章 片思い
電車の中で、私は家を出る前に何度も確認したのに、また確認している。

じっとできずに、扉の前で窓に映った自分の姿を確認したり、お弁当が入ったバケットバッグを確認したり。


とにかく落ち着かない。

本当に、何をこんなに浮かれているのだろう?

先週、文剛は他に好きな女の子がいると言っていた。それに、私たちは単なる互助関係だ。恋人でもないし付き合ってもいない。


私も、好きな人はいないと言った。



だけど、気になる人ができた気がしている。

そう、私は今、文剛の事が気になって×2、仕方ないのだ。


でも、私は自分の感情にブレーキをかける。文剛を好きになってはいけない。彼には思いを寄せている人がいる。


『いいんだ……片思いだから……』

そう言った時の文剛の切なそうな表情を思い返し、私はまた、ズキンとした。


吉祥寺駅に着いたのは、約束の時間の30分も前だった。少しでも早く文剛に会いたい、はやる気を抑えきれなかった。

今日は、直接文剛の部屋へ行くことになっている。どこかで時間を調整して伺おう。そう思っていた。


ところが、改札を抜けると、人ごみの中に頭一つ抜けた文剛を発見した。

(え?なんで早川君がいるの?)思わず身を隠そうとする私に、文剛は気づいたのか右手を軽く振る。


なんで逃げようとしてるんだろう、私は。(ホント、可笑しい)はにかみながら、文剛の元へ行く。

「どうしたの?今日は直接行くって言ってたのに」


「あはは、なんか、少しでも早く会いたくて、迎えに来ちゃった」文剛もはにかむ。

「なんて、綾瀬さん、少し天然が入っているから、迷子になるかな~なんて、あはは」

少しでも早く会いたいと言われて、少しドキッとしたが、天然といわれて凹む私。


「あーー、ひどーいーわたし、いくら何でもそこまでドジじゃないよ」


(あー、なんだろう、この気持ち、楽しい)


「じゃあ、行こうか、今日はちょっとプランがあるんだ」

そう言って、文剛は歩き出すが、先週よりも少し歩く速度が速い。

私は、手を伸ばし、文剛のシャツの端をつまんだ。

「ねえ、早川君、歩くの早い」

「あわわ、ごめん、ついいつもの調子で」そう言って歩く速度を落とす文剛。


私は、そのまま文剛のシャツの端をつまんで歩く。



(ホント、何だろう……楽しい)




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