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地味子が官能小説を書いたら
第4章 恋に落ちたら
文剛のマンションの前。

ここを訪れるのは二度目だが、やっぱり臆してしまう。貧乏学生の私には眩しいばかりの佇まいだ。

文剛に続いてエントランスを抜け、エレベーターに乗り込むのだが、今週は先客がいた。


いかにも遊んでいそうな少し年齢が高めの男と、香水の強い水商売風の女。二人とも朝帰りみたいだった。


(こんな時間まで遊んでいたのだろうか?)


私とは住む世界が違う人達に、少し距離を取りたくなり、私は次第に文剛へと近づく。

男の方がチラチラと私を見るが、どうにもねちっこい視線だ。


エレベーターが降りてきて、ドアが開き、二組のカップルが乗り込む。

エレベーターは、8人乗りで、そこそこ広い。二組のカップルは対角に位置した。

室内に女の香水の匂いが満ちる。


そして、彼らは私たちに構わずいちゃつき始めた。

女は、胸を押し付けながら甘い声を出し、男は女の尻を撫で回す。なんとも下品である。

「ね~~、徹夜したからって、直ぐに寝ないでね~~」

「ばかやろ~、俺は疲れてんだ、寝かせろよ」

「ええ~~、いや~~ん、イ・ジ・ワ・ル」


(まるでお笑い芸人のコントみたいだ)文剛と目が合い、お互いに苦笑する。

彼らは6階で降り、ようやく私たちは下品な空間から解放された。


「さっきの男の人、女の人のお尻を撫でまわしながら綾瀬さんの方を見てた」苦い顔をしながら文剛が言った。

「そうなの、なんだかイヤラシイ視線を感じた」

「綾瀬さん、スタイル良いから、男の人なら見てしまうよ」

「え、わたしなんかを?」(地味子なのに……)

文剛がそんなことを言うなんて……

エレベーターは8階に止まる。


エレベーターを降り、私たちは文剛の部屋へ向かったが、さっきまでの下品な空気が纏わりついているような気がして、私は文剛にできるだけ接近する。

鍵を開けながら、「あれ?綾瀬さん、今日は何かつけてる?」

「なんだか良い匂いがする」

「そうかな、香水は付けてないけど」

実は、今日は少しファンデーションを塗ってきたのだ、その匂いに文剛は気づいたのだろう。

部屋に入り、玄関先で履物を脱ぐ。

「綾瀬さん、今日はペディキュアしてるんだね」

今日は、サンダルを履いてきたので、ちょっとだけオシャレしてみたのだ。と言っても100均で買ったものだが……




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