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地味子が官能小説を書いたら
第4章 恋に落ちたら
クスクスと、落ち着いた笑いに変わった文剛だったが、容赦なく続ける。

「あの時の、花音ちゃんの、鳩が豆鉄砲を食ったような顔って、無茶苦茶可愛かった、あはは」

「ぶーーー。だって、田舎じゃピザなんてあまり食べなかったし、ピザの注文なんてしたことなかったんだもん」

(あまりどころか、1回しか食べてません……てか……)


(いま、さらりと、わたしの事を『可愛い』って言った?)

胸がざわつき、鼓動が段々と早くなる。しかし、高揚感はなかった、むしろ……




(嬉しくない……だって)





「文剛君、だめだよ」

「え、何が?」


「さっき言ったばかりじゃない、好きでもない人にお世辞でも『可愛い』なんて言ったら、もし、文剛君に彼女がいたらイヤだと思うよ」

そうだ、文剛には好きな人がいるのだ、だから、私は彼を好きにならないようにしているのに、ちょっと無神経だと思った。

でも、私の気持ちが、ある方向へ向かっている事を、文剛は知らないから仕方ないのか、とも思う。


「あ、これは、お世辞とかじゃなくて、その……僕が好きなのは……」


文剛が困っている。余計な事を言ってしまって、またまた後悔してしまう。
今、自分を罵倒したら、いろんなものが崩壊しそうで、できない。とにかく話題を変えたかった。



「そ、そうだ。お昼にしよう」

突如話題を変えられ、困惑する文剛に、私は勢いのままたたみかける。

「わたし今日、頑張って作ってきたんだよ、お弁当、お口に合うか分からないけど……」


「そうだね、お昼を食べてから、次の作業に入ろうか」何事もなかったように、文剛は優しく目を細めてくれた。

「そうだ、せっかく天気も良いし、外で食べない?」

「外で?良いね!公園も近くだし、ピクニックみたいね」今度は高揚感が高まる。

早速二人で準備に取り掛かった。

私は、カウンターに出しておいたお弁当をバケットバックに詰める。

「文剛君、お茶ってある?」

「あ、冷蔵庫にペッボトルが何本か入っている、僕が出すよ」と言って冷蔵庫を開け、ペットボトルを取り出した。私はそれを受け取り、バケットバックに放り込む。


「あと、おしぼりとか、ないかな?」

「ちょっと待って」と言って、リビングを出ていった文剛は、ウエットティッシュの袋をもって戻ってきた。


「これ使えるかな?」




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