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地味子が官能小説を書いたら
第4章 恋に落ちたら
髪をまとめた文剛をマジマジと見てしまう。

細く形の良いあご、鼻筋がきれいだとは思っていたけど、顔の輪郭がはっきりしたことで、全体の顔の作りが整っている事が分かってしまった。

それに、眼鏡を半分覆っていた前髪が横に流されたことで、瞳と眉毛のバランスも良い事がバレてしまった。


(どうしよう……顔なんてどうでも良かったのに……これじゃ、わたし……)

「どうかした?花音ちゃん」

「あ、髪をまとめると雰囲気が変わるんだね」

「あ、変かな?やっぱり」

「ちゃんと散髪に行けば良いんだけど、どうにもめんどくさくて、放置してたらこんなに伸びちゃったんだよね」


「ううん、変じゃない、むしろ……カッコイイ……よ」


(言ってしまった!言ってしまった!)自分で言っておきながら動揺する私。

文剛を見ると……固まってる!


「お、女の子に『カッコイイ』とか言われたの、初めてだよ、なんだか嬉しい」と文剛は、はにかんだ。


「あ、でもさっきわたし、好きでもない子に『可愛い』なんて言っちゃダメ、なんて言ったのに、矛盾してるよね」

「そ、そうだった、さっき僕を叱ったのに、花音ちゃんも軽々しく好きでもない男を無暗に褒めちゃダメだよ」

「えへへ、面目ない」と愛想笑いする私……でも。




(ちがうよ、文剛君、わたし、もう……)




先週、文剛は『片思いなんだ』と言って、寂しげな表情をしていた。

きっと、今の私は、あの時の文剛と同じ表情をしている。



「ね、お弁当食べちゃおう。これね、わたしの自信作なの卵焼き、シソを巻いてるんだよ」

停滞した自分の気持ちを切り替えるため、話題をもとに戻す。


「へ~、すごいね、これ全部が花音ちゃんの手作りなんだよね」

「えへへ、味の方はどうだか、だけど食べて」

「いただきま~す」

「うお!美味しい!」


文剛は、私が作った料理をモグモグ食べながら『美味しい』を連発した。

好きな男の子が、私の作った料理を『美味しい』と言ってくれる。たったそれだけで涙が出そうなくらい幸せな気分になれた。




今日、朝からずっと楽しいと思っていた。

文剛には他に好きな人がいると分かっているのに、止まれない。



(そっか、これが人を好きになるという事なんだ)

とうとう、私は文剛を好きになってしまった……




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