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地味子が官能小説を書いたら
第4章 恋に落ちたら
「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

文剛は、私のお弁当を綺麗に食べてくれた。

食べ終わって、髪をもとに戻そうとしたので、私は「今日は暑いし、そのままにしたら」と言ってみた。

「そうしようかな、普段は女の子みたいになるからやらないんだけど」

「うふふ、文剛君みたいに背の高い女の子がいたら、バスケの選手かと思われちゃうよ」

「あはは、それもそうだね」

「そういえば、文剛君って身長何センチあるの?」

「えーと、この間の健康診断で183cmだったかな」

「すごーい。私より30センチちかく高いんだね」

「花音ちゃんは、何センチ?」

「155cm」

「体重は?」

(え?)……一瞬固まる私。

「こら!女の子に体重を聞かない!」

「あはは、ごめん、さすがに天然の花音ちゃんでも答えないか」楽しそうに笑う文剛。

「ぶーーー」とむくれるけど……


(楽しい)



なんでこんなに楽しんだろう、なんでんもないやり取りが自然にできている自分が不思議だった。ずっとこうしていられたら良いのにと思う。

でも、そう思った途端に胸が苦しくなる。


こういう事ができるのも、あと一ヶ月くらいなんだ……


「花音ちゃん」

「ん?」

「せっかくだから、井の頭公園を通って帰ろうか?」

「そうね、もう少し外にいたい気分ね」

そう言って、私は急いでテーブルの上を片付ける。くよくよしても始まらない。現在を楽しまないと。


そのまま通りを公園の方へ向かうと、直ぐに入口へたどり着いた。

しかし、ひとたび公園の中に入ると、さすがに休日だけあって混雑ぶりは凄まじかった。

「うわ、凄い人出だね」迂闊に立ち止まると通行の妨げになるレベルだ。私ははぐれないように、文剛の腕に手を絡める。

「今日はまた、一段と人が多いね、今が一番良い季節だから仕方ないか」

私は、むしろこの人ごみに感謝したい、だって、こうやって文剛と距離を縮めて歩けるのだから。



人ごみに揉まれながら池の周りを歩いていると、文剛が出店の前でふと立ち止まった。


「ほら、あれ」

「あれって、花音ちゃんの小説に出てくるネックレスじゃない?」


文剛が指さした先には、小さな貝殻に紐を通してチェーンの代わりにし、トップに二枚貝をあしらったネックレスが。

そうだ、あれは……




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