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地味子が官能小説を書いたら
第4章 恋に落ちたら
「『潮騒の記憶』あれ読んだとき、僕、思わず泣いちゃったんだよね」

『潮騒の記憶』は大学1年の時に初めて小説投稿サイトに投稿して、いきなり月間賞という賞を取った作品だ。

たしか、商品はクオカード5000円だった。




---------- 潮騒の記憶 ----------

ちいさな海辺の漁村で育った幼なじみの男の子と女の子、女の子は病弱で長生きできない、男の子は女の子を元気付けたくて何かプレゼントをしようとする。

男の子は『僕が誕生日にプレゼントをあげるから、必ず受け取ってね』と言い、次の誕生日まで女の子が生きるための希望を与える。

男の子は、自作のネックレスを作ろうと、毎日浜辺に出かけては形の揃った小さな貝殻を集める。

女の子の誕生日は7月。あと一つ、ペンダントトップになる貝殻を見つければ完成と言うところで、季節外れの台風が訪れる。

女の子の誕生日まで猶予がない、男の子は嵐の中、貝殻を探しに出かける。

やっと見つけた貝殻をペンダントトップにつけて完成したことを喜ぶ男の子……

女の子の誕生日、男の子が作ったペンダントが女の子の手に渡るが、男の子はいない。

ペンダントを完成させた男の子だったが、大波にさらわれおぼれ死んでしまったのだ。

男の子は浜辺に打ち上げられたが、しっかりとペンダントを握っており、事情を知った大人が、女の子へ届けたのだった。

男の子がいないことを不審がる女の子だったが、大人たちは本当の事を教えてくれない。

誕生日の夜、『なにか音がする』と女の子が貝殻を耳にあてると貝殻から『誕生日おめでとう』と男の子の声が聞こえてくる……






私としても思い出深い作品だが、まさかその頃から文剛が私の作品を読んでいたとは知らなかった。


「あれ、読んでくれたんだ……初めて書いた作品だったから、ベタ過ぎて恥ずかしい」

「そんなことないよ、読者のレビューも良かったじゃない、僕はいっぺんでファンになったよ」

文剛に褒められると、照れくさい。


「すみません、これ試着しても良いですか?」

「ちょっと着けてみて」お店の人にネックレスを借りると、文剛は、私の頭の上からネックレスをかけてみた。


(文剛君、こういう時は後ろからかけるんだよ)


私は、彼がネックレスをかけやすいように背中に手を回し、距離を詰めた。




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