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地味子が官能小説を書いたら
第4章 恋に落ちたら
文剛がネックレスをかけ、私が文剛に身体を寄せる。まるで抱き合っているかのような姿勢になった。

二人とも固まったままでいると、出店のお姉さんが声をかけてきた。

「お二人さん~、お熱いのは結構なんだけど、それじゃあ、せっかくのネックレスの着け具合が分からないよ」と笑う。

「すみません」
「すみません」

二人でハモってしまう。

「へ~、彼女、似合ってるじゃない」

「それね、私が好きな小説に出てくるネックレスなんだよ」

「え、それって、もしかして『潮騒の記憶』ですか?」

「あれ、お兄さん、知ってるの?サイトの小説で全然有名じゃないんだけど」

「僕も読んだんです。か」

『彼女が書いたんですよ』と言いたげな文剛を制す。


「これ、ください!」

値段を見ると……


(6000円!!!!)


「ちょっと、文剛君、それ、どうするの?」


「彼女にプレゼントなの?」

「はい、まだ早いけど、誕生日が7月なんです」

「へ~、小説の女の子と同じ誕生月なんだね」

「よし!5000円にまけとくよ」

「え、いいんですか?」

「うん、あの小説を読んだ人なんだ、同じ気持ちを共有できた仲間みたいなものさ」



「彼女、幸せだね~、見込あるよ、彼」


「このまま着けて帰ります」

「まいどあり~」



あれよあれよという間に事は進み、私は5000円もするネックレスを着けている。


ホムラ(男の子の名前)が身命を賭してマーハ(女の子の名前)のために作ったネックレス。

私の小説のネックレスを見事に再現している。


「文剛君、こんなに高いもの、わたし受け取れないよ……」

「それに、どうしてわたしの誕生日を知っていたの?」


「えーと、それは推測だったんだけど、アタリだったんだね」


「たぶん、マーハは花音ちゃんがベースなのかなって思って、だったら、自分の誕生日をマーハの誕生日にするんじゃないかなって思ったんだ」



「それは、僕からの感謝の気持ち、心に残る物語をくれたことと、今日のお弁当」




受け取って良いのだろうか、恋人でもないのに、でも、私の小説を読んでくれていたこと、あの場で偶然にもこのネックレスを見つけてくれたこと……

「ありがとう」

いつの間にか、私たちは腕を組んでいた。

「帰ろうか、花音ちゃん」

「うん、文剛君」




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