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地味子が官能小説を書いたら
第5章 傷心
「あ、ごめんなさい、いつまでも腕を組んで」

公園を出て、住宅街に入っても腕を組んだままになっていることに気づき、私は慌てて文剛から離れた。


「だけど、びっくりしたな〜、私の小説からネックレスを作っている人がいたなんて」

そう言って、私はネックレスのトップになっている二枚貝を手の平に乗せて見つめた。

文剛も、出店のお姉さんも、私の作品を好きだと言ってくれた。凄く勇気を貰った気がした。



文豪のマンションに戻ったころには、14時を過ぎていた。

「ちょっとのんびりし過ぎたかな、遅くなっちゃったね」

「うん、でも楽しかったよ」


今日の目的は、小説の清書を済ませて文剛のアドバイスをもらう事だったが、すっかり私は忘れていた。



部屋に入ると、私たちは早速作業に取り掛かった。

私は文剛のパソコンを借りて、クラウドに保存した下書きの清書、文剛はノートに下書きして、その後、タブレットに清書する予定になっていた。


パソコンを打ちながら、私は以前から聞きたかった事を文剛に尋ねた。

「ねえ、文剛くんは、どうしてノートに手書きするの?」

「うーん、どうしてというか、昔からノートに書く癖がついていたから、手書きの方が捗る気がして」


「そうなんだ、昔って、いつから小説を書いているの?」


「初めて書いたのは、小学5年生の時かな」

「ええーー、そんな昔から書いてるの?」


「子供の頃から本が好きで、色んな文学書を読んでたんだけど、『君よ知るや南の国』って本が好きで、あ、これってゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』の一部を抜き取ったものなんだけど……」


文剛は、私の知らない物語の事を話してくれた。



サーカス一座の歌姫のミニヨンは、いつも自分が憧れているまだ見ぬ南の国(イタリアの事)の事を歌いヴィルヘルムを和ませてくれる。

ミニヨンは幼い時にジプシーに誘拐されて、サーカスの歌姫となったのだが、ミニヨンがサーカスでムチで打たれていたのを見たヴィルヘルムは、お金を払ってミニヨンを救出する。

まだ13歳のミニヨンは、父のように慕っていたヴィルヘルムに恋をしてしまう。

しかし或る日、美しい女性が突然現れて、ミニヨンの目の前でヴィルヘルムに抱き着いて婚約を申し出る。

それを見たミニヨンは、ショックのあまり突然死してしまう。




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