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地味子が官能小説を書いたら
第1章 放課後の図書館
とりあえず、エッチシーンは参考にした本と想像で書くしかないとして、その他の部分で登場人物の心理や変化を書いていこう。

それにしても、想像だけで書いたとして、不自然にならないだろうか?

アダルトビデオの類を観賞してシーンの模写ができれば良いのだが、生憎、私の家にはビデを再生する機器はおろか、テレビさえもない。

スマホで観ようにもパケットの制限もあり、wifiがない環境では、そう易々と観れるものでもない。図書館のパソコンは、アダルトサイトへのアクセスを遮断しているため、利用はできない。


困った……完全に手詰まりだ。



今度は背もたれに思い切り体重をかけ、天を仰いだ。


「綾瀬さん、どうしたの。もしかして、途方に暮れてる?」

不意に背中越しに声がかかる。

声の主は、早川文剛(はやかわぶんごう)、私と同じ文学部の同級生だ。そして文藝サークルの仲間でもある。

もっとも、サークルといっても活動実績がほとんどなく、幽霊サークルに等しい存在ではある。


「あ、早川君。ちょっとね、小説を書いてるのだけど、上手く書けなくて困ってるの」

「へ~、またコンクールにでも応募するの?」


「え、ええ……まあ……」

官能小説を書いているとは言えず、曖昧な返事をする。


「小説投稿サイトのコンクール?」

「どこの?」

と言いながら、文剛は机の上を私の頭越しに覗き込んだ。文剛は身長が180cm以上はある長身だ。

ヒョロヒョロしたもやし体形で、眼鏡のふちが前髪で隠れるほど髪の毛を伸ばし放題にしており、彼も、私同様に地味な人間だ。


あわわ、と慌てて本を隠そうとしたが、もう遅い。

ひょい、と手を伸ばし、3冊のうちの1冊を手に取った。彼は、指も長くて細い。


「あ、それは」首を斜め後ろにひねり、文剛を確認すると、既にピックアップした本をパラパラとめくっていた。


「涼子の小さな突起を男が舌で転がす。『あひーーー』快感で涼子は大きな叫び声をあげた」

「『あう、オシッコがでそうなの』『だせ、出すんだ、思い切りな』男は口角を意地悪く上げた」

「その瞬間、ビシュッっと水しぶきが上がり、男の顔を濡らした」

文剛のか細い声がエッチなシーンをより一層、卑猥にする。


(ばか、声に出して読まないでよ!)

私は耳の先まで赤くなる気がした。




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