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地味子が官能小説を書いたら
第8章 いつわりの日々
サークル部室棟は、4階建ての建物で、その中に、40サークルがひしめいていた。

私と美鈴が所属する文藝サークルも、かつてはここに部室を構えていたが、活動実績が乏しいため、今では追い出され、野良サークルと落ちぶれている。

電研は、4階の階段奥に部室を構えていた。

コンコン、とドアをノックし、美鈴が『ち~すっ』と中に入っていく。

私もその後に続くが、思わず「うッ」と声をあげた。

ワンルームアパート程の部屋に、男子が6人も集まっている。

中央に大きな座卓テーブルがあり、そこにノートパソコンを並べて、パチパチとキーボードを叩いていた。

何とも異様な空間だ。


「先輩~、連れてきました」と、美鈴がその中の一人に声をかけた。

がっしりした体形の男は、何故か美鈴に対して横を向いたまま「うむ、蜂矢、そこのお嬢さんが昨日メールで相談していた子かね」

「はい、あ、カノン、この人がわたしの先輩で、向島一徹(むこうじまいってつ)」

「はじめまして、電研の部長、向島だ」

今度は、私に背を向けたまま、向島は挨拶した。

「ねえ、なんで向島先輩はこっちを見ないで挨拶してるの?」私はひそひそ声で美鈴に尋ねた。

「先輩は極度の女性恐怖症なのよ、とうより、二次元の女の子としか面と向かって話せないの」

「あ、あ、あ……」苦笑いするしかない私。

とりあえず、挨拶をしなければ、と思い私は「初めまして、綾瀬花音です」とペコリと頭を下げた。


「話は、蜂矢から聞いてる、パソコンは余っているから、それを使うとして……」

「村田、このお嬢さんにパソコンをご用意して差し上げろ」

「御意」と一言返事をすると、男子学生がひとり、棚からノートパソコンを持ってきた。

なぜか、賞状を渡すように、うやうやしく私に差し出す。

「あ、ありがとうございます」

「お嬢は、席は、ここを使って」と向島は、座卓テーブルのお誕生席を示した。

そこには、フカフカの座布団が敷いてある。


他の男子学生は、床の上にそのまま座っている、私は申し訳なくなり、「あ、あの、わたしも座布団は要らないですから」と遠慮した。

「いえいえ、蜂矢の大切な友人である、お嬢を床に直接座らせるわけにはいかない」

「ささ、まずは座って」

「では、失礼します」

私は、向島に促されて、お誕生席に座った。




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