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地味子が官能小説を書いたら
第8章 いつわりの日々
美鈴が拳をあげる。

「わ~、花音先輩、助けて~」と流留は私の背中に回って、大げさに怖がって見せた。

「ちょ、流留、お弁当が食べられないよ」

「あれ、花音先輩、お弁当?自分で作ってるんですか?」

「うん、わたし、基本的に自炊だから」

「うわ~、いいな~、今度、俺のとこにご飯作りに来てくださいよ」

「流留、一人暮らしなんだ、いいわよ、わたしで良ければ作ってあげる」

「ちょ、カノン、大丈夫?安請け合いして、コイツだって一応男なんだよ」

「うん、なんだか流留って、弟みたいで可愛いんだもの」

その瞬間、ピシッと空気にヒビが入る音を、私は感じた。

「カノンちゃん……それは……酷だよ」相変わらずの遥のオーバーアクションに、私は不安になる。


「え、わたし、何か変なこと言った?」

「カノン……男の子に、『弟みたい』って、『脈ありません』と言ってるようなものよ」

「え、え、だって、わたし、流留のこと男の子として全然意識してないよ」

今度は、岩が落ちる時のガーンという音がした気がした。

「良かったね~ナガル、カノンお姉さんが、ご飯作ってくれるって」とニヤニヤしながら美鈴は流留の肩をポンと叩いた。

まるで幽体離脱したかのように呆けていた流留だったが、ハッと我に返ったような仕草をみせ、あはは、と笑った。

「じゃあ、今度の土曜日はどうっすか?」

「あ、土曜日は、わたし、ちょっと用が……」

「そうか、じゃあ、日曜日は?」

土曜日は弁岳とのデートだ、その上、日曜日まで予定が入ると自分の事ができないが、約束してしまったので仕方ないか、そう思った。

「いいわよ、じゃあ、日曜日ね」

「やったーーー!」と、流留はその場をぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。


「まったく、調子良いんだから」美鈴はヤレヤレと両手を広げて見せた。


美鈴たちと別れ、電研の部室へ向かった私と流留だったが、部室に入ると、異様な空気が流れていた。


一人の女子学生が、腕組しながら、部員たちを見下ろしてる。

見ると、すごい美人だ。

「ん、堂本じゃない、久しぶりね」

一瞬で流留の表情が硬くなる。

「あ、ども、桐谷先輩、お久しぶりっす」


「あら、その子は?新入部員?」


「あ、この人は、文学部2年生の綾瀬花音さん、ここでパソコンを使ってるんです」

「ふ~ん」




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